保育士の皆様。
- 保育士不足はなぜ起きている?
- 給料上げれば良いんじゃないの?
「保育士不足」と言われていてなにか違和感を感じたことはないですか?私は魅力的な求人があればすぐにでも応募するつもりなんですが、実際は、まったく存在しないです。つまり不足している割に全然、保育士の待遇が上がらないということです。
「奴隷不足」という表現は、最近では保育士に限らず全産業で使われている言葉になりますが、保育業界に関しては、より「奴隷不足」という状態が加速するような仕組みになってしまっています。
保育士不足は都合の良い奴隷不足ということと、保育業界の構造がそれをさらに加速させてしまっているということを説明します。
複数回の転職経験があります
ブラック園からホワイト園に転職した経験があります
その経験が参考になればと思います
保育士不足の現状は?
日本の保育園での保育士不足は、平成20年度頃から言われ始めていて、その時点では平成29年度末における保育士数は、約7.4万人不足すると言われていました。
その状況をうけて厚生労働省は保育の受け皿を確保するためには、保育士の確保が重要という考えをベースに毎年少しずつ
厚生労働省は以下のような施策を実施してきました。
- 保育士の給与を約13%(月額4万1千円程度)改善(2013年度から2019年までの時点での合計)
- 技能・経験に応じて月額5千円から4万円の給与改善
- 潜在保育士の復帰支援(研修等)
- 就職準備金(上限40万円)の貸付
- 未就学児がいる場合の保育料の一部貸付
- 保育園でのICT(情報通信技術)の活用による書類作成業務の省力化を支援
- 3歳児の保育において、保育士を手厚く配置している場合に、保育園等の運営費を上乗せ
- 保育士のための宿舎の借り上げを支援(上限月額8万2千円)
現時点(2020年時点)ではどれだけの保育士人材が不足しているのかという統計はありませんので、実際に過去の予測からどれくらい改善されているかはわかりません。
保育士が不足していることによって新しい保育園を開園することができないということも起きているので、実際に不足している人数を計り知ることも難しいです。
待機児童も未だに発生している状態なので、少なくとも保育園(そこで働く保育士も含む)が需要に対して足りているという状態ではないです。
実際に現場で働いている感覚では、保育士が十分に足りているという感覚はなく、だれかが辞めてしまうと次の保育士を採用するのに時間がかかるので、その間、他の保育士の負担が増加するという状況も起きています。
反対に、転職をする際には、あまり正しい選考を行っているという印象も少なく、とりあえず資格と経験があれば採用という保育園も少なくないです。
また、保育の内容も変わってきており、保育士一人あたりのの責任や負担も増加しているという側面もあります。
また、以下の保育士の有効求人倍率の推移を見ても、年々増加傾向にあり現状では保育士不足が解消されたとは到底言えない状況にあると思います。
潜在保育士も増加している
保育士資格を持っていても保育士として働いていない、いわゆる潜在保育士も年々増加しているという状況にあります。
潜在保育士の人数は、およそ80万人近くいると言われています。保育士登録者数は約120万人程度なので、およそ3分の2が潜在保育士となっているようです。
それだけ他の職業のほうが保育士と比べても総合的に魅力が上回っているという状況にあると言えると思います。
今後、新型コロナウィルスの影響などによって不景気が進んでいくと、相対的に保育士の仕事の魅力が増えて、潜在保育士の復帰が進むかもしれません。
どの保育士の求人も待遇はほぼ変わらず低い
保育園間で待遇差が少ないのは悪いことではないですが、保育士の待遇は国家資格が必要な職種としてはかなり低いです。
求人間で差があるのは定員、人間関係、保育の内容がメインで待遇はほぼ横並びで低いです。
私自身も求人を選んでいて「もう少し基本給が高ければ良いのに」と思うことが多かったですが、どの求人もほぼ横一線で低いです。
求人を見ていても、一見差があるように見えても、年収で換算するとほとんどどこも同じくらいの水準になります。手当の支給の仕方や賞与の金額などでそれぞれの保育園がバリエーションをつけていますが、年収で見るとほとんど同じになります。
逆に言えば、1万円だけでも他の求人より高く設定すれば、すぐに保育士の応募があって採用できるはずです。でもそれができないのが保育の業界で、それには理由があります。
保育士の賃金が低い原因の根本は国の制度にある
保育士不足が都合の良い奴隷不足になってしまっている現状の根本的な問題は国の制度になります。
保育園の運営費は国の補助金で賄われています。国は保育園を運営するのに必要な金額を公定価格として、受け入れるこどもの年齢ごとに細かく定めています。
保育園の運営にかかる費用は、そのほとんどが人件費で占めています。
保育の定員に対して必要な保育士の人数も決まっているので、費用を削減できるのは、ほとんど保育士の人件費になります。補助金が足りないので、多くの保育園は保育士の人件費を減らしています。
もちろん、中には保育士を低賃金で働かせ、国からの補助金を自分のものにしている保育園の経営者もいますが、そもそもとして国が試算している金額が足りていないのです。
低賃金でも法律を守っているのであればまだしも、サービス残業、持ち帰り残業、処遇改善費を保育士に渡さない、パワハラなどを行なっている保育園も認可保育園として、市区町村から認可を受けて運営しています。
保育園が足りないので、法律を守っていないブラック保育園も自治体からのお墨付きである認可を受けて運営しているのが実情になります。保育士から不当に搾取する保育園の認可を取り消せば、少なくとも法律違反をする保育園はなくなるはずです。
これらが保育士不足なのに保育士の賃金が上がらない一番の理由になります。
国が定めている保育園の補助金である公定価格を上げれば、保育士を確保するために給料を上げることができます。
このように、保育業界は公共性の高い福祉事業を保育士個人がブラックな労働環境を受け入れることで成り立っている構造になります。
例えが適切かわからないですが、もし、お医者さんが低賃金で働かされていたら嫌ですよね。そのようなことが起きているのが保育業界になります。
生産性の低さ効率の悪さは低賃金の保育士でカバーされている
保育園の収入である国からの補助金は受け入れる子供の人数によって決まっているので収入を上げることは難しいです。そのため、必然的に保育園の運営にかかっている費用を削減することになります。
無能な経営者が運営しているブラック保育園は「業務の生産性・効率を上げる」ことと「保育士にサービス残業をさせる」では、確実に後者を選びます。そのほうが簡単だからです。
ブラック保育園が潰れにくいことも要因の一つ
一般企業は人材不足で倒産することがありますが、保育園はなかなかそうはいきません。
それは保育園が公共性の高い福祉事業だからです。特に認可保育園は市区町村が認可を行い保育に必要な定員を確保しています。
子どもを預けている保護者の目線でも去年まで開園していた保育園が次年度急に閉園となったらとても困ることになります。
そのような要素もあって、経営がうまく行っていないからといって簡単に閉園したりはできないです。
結果的にブラック保育園は、奴隷を募集するために甘い言葉を使って低賃金の保育士の求人を出し続けることになります。
処遇改善費が保育士に行き渡らないケースも少なくない
国が保育士の待遇を改善するために保育士に対して処遇改善費として追加の費用を捻出しています。
この処遇改善費は、保育園を通して保育士支払われるものですが、これが実際には支払われていないケースが問題になっています。
「保育士の処遇改善交付金、約7億円が賃金上乗せに使われず 不透明な経営実態明らかに」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200114-00010000-wordleaf-bus_all
記事によると、「保育士の賃金を増やすために政府が支出した交付金のうち、7億円が賃金の上乗せに使われていないという実態が会計検査院の調査で明らかになりました」とあります。
これによって特に罰則や交付金を変換させたなどのニュースもないので、おそらく、そのまま保育施設の運営が続けられていることになるでしょう。
全国6千箇所の保育施設のうち660の施設で賃金上乗せに使われていないことがわかったので、全体の実に10%以上に上ります。しかも、日本には保育施設はもっと多いです。
これは個人的な見解ですが、そもそも処遇改善費をいわば、盗んで保育施設の利益にしている保育園が正しく調査に回答しているという保証もありません。実態はもっと多くの保育園が賃金上乗せに利用していない可能性もあります。
このように、国の制度設計のミスによって、保育士の待遇改善が進んでいない実態もあります。
今後起きるのは保育士配置の規制緩和
今後保育業界に起きるのは、都合の良い奴隷を求めての規制緩和です。保育士が足りないから保育士の給与をあげるということより保育士以外が働けるようにしようというのが国の方針のようです。
具体的には、保育士の配置基準をゆるくするということです。保育士が足りない分を無資格の人で穴埋めしようという動きになります。
現状でも業務に対して保育士の人数が足りない基準になっていると言われているのに、資格のない人が保育の業務につくことになると既存の保育士の負担はますます増えていく未来が待っています。
その一つの例が、地方裁量型認可化移行施設です。
地方裁量型認可化移行施設は、認可外保育施設が保育に携わる保育士の割合を6割でも認可保育園同等の運営費が入る仕組みになっています。
認可保育園に移行する間の5年間の暫定措置とはなっていますが、保育士配置の大幅な規制緩和になります。
保育士の方でも聞いたことがない施設の種類かもしれませんが、知らない間に保育士配置の規制緩和が行われています。
今後はますます、保育士が足りない分を無資格の人で穴埋めしようする動きが強まります。
保育士が奴隷不足に対抗できること
少しでも良い保育園に転職をする
保育士が奴隷募集に対抗してできることの1つ目が、業務効率が良い・生産性の高い保育園で働くことです。
業務効率が良い・生産性の高い保育園は必然的に保育士の人件費にかけられる費用も高くなります。保育園においては、業務効率が良い・生産性の高い保育園でないとホワイト保育園となるのは難しいです。
でもどうやって見分けたら良いのかわからないという方には、転職エージェントの利用をおすすめしています。求人誌やハローワークなどと比べてもブラック保育園に出会う確率は低いです。
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副業で保育士以外の収入源を作る
次にできることが保育士以外の収入源を作ることです。保育業界がこのような状況なので、この業界の中でがんばっても奴隷の状態から開放されるのは難しいです。
できれば保育とは関係のない業種で副収入を偉られると良いです。ベビーシッターのキッズラインなどは保育のスキルをそのまま生かして副業を行うことができます。
副業が大きくなれば、保育士としての業務を縮小して働くことも可能です。とにかく保育士という仕事は給料が低く、伸びも少ないので、他の方法で稼げるということが給料の伸びに繋がります。
保育士を辞める
最も効果的なのは、悲しいことですが保育士を辞めることです。
保育士を辞めることで実質的に待機児童が増えることになるのでもっとも効果がある方法です。潜在保育士は80万人に言われています。もちろん一人辞めたぐらいでは変わらないかもしれませんが、それらが積み重なって今の保育士不足になっていると思います。
保育士を辞められる環境にある人は一度保育士を辞めて、待遇が改善したら戻ってくるというのが良いと思います。
保育士を辞めた結果、そのほうが良かったということもあるかもしれませんし、そうでなくても復帰することは可能です。最近は、徐々に保育士の待遇改善が進んでいるので、戻ってきたときには、待遇が少し改善しているかもしれません。
まとめ:保育士不足は都合の良い奴隷不足なだけ。構造上防ぎようもない。【人材不足】
保育士不足というのが都合の良い奴隷不足なだけということを説明しました。
- どの求人も待遇はほぼ変わらず低い
- 原因の根本は国の制度にある
- 生産性の低さ効率の悪さは低賃金の保育士でカバーされている
- ブラック保育園が潰れにくいことも要因の一つ
- 今後起きるのは保育士配置の規制緩和
保育士不足(奴隷不足)なのは低い賃金でしか保育士を雇えない現状があるためです。高い待遇を提示できる保育園がないので、そのような状況にならざる負えないです。
保育士は奴隷不足に対応するには少しでも良い待遇の保育園に転職するか、保育以外の方法で収入を得られるようにするしかないです。