保育園で働く保育士の方。これから就職・転職活動をする保育士の皆様。
なんでブラック保育園は無くならないのだろうと疑問に思っている方もいらっしゃると思います。今回は、なぜブラック保育園は無くならないのか、なぜブラック保育園で働いていしまう保育士がいるのかという点について説明します。
ブラック園で勤務していた経験があります
その経験が参考になればと思います
ブラック保育園が無くなる、閉鎖する条件
ブラック保育園が無くなる、閉鎖する条件は、以下の場合です。
- 保育士が一斉退職した場合
- 利用者がいなくなった場合
ただ、この後説明しますが、これらの条件によって理論上はブラック保育園が消滅しますが、実際には消滅までは行かずに存続することが多いです。
保育士が一斉退職した場合
流石に受け入れられるはずの園児を受け入れられなくなるので、ブラック保育園が消滅するきっかけになります。
ただし、数名の保育士の一斉退職によって、保育園が閉鎖や休止状態になることはあまりありません。ニュースに取り上げて問題になるレベルではない限りは、来年度から新たな人員が補充されて運営が続くというケースが多いです。特に保育園の場合は、通っている園児がいるために急には閉鎖にはなりにくいです。また、一斉退職によって、仮に、一時的に保育士が不足してしまったとしても、そこはブラック保育園なので、保育士のサービス残業や、一時的な配置基準違反の状態で運営を続けるでしょう。
保育士の一斉退職によってブラック保育園が無くなるケースは、認可外の保育施設であったり、よほどニュースなどに取り上げられて大問題になる場合くらいです。
利用者がいなくなった場合
保育園の利用者がいなくなったり、あまりに少なくなってしまった場合も、ブラック保育園が消滅するきっかけの一つです。
保育園の利用者がいなくなれば、保育園として収益をあげることができなくなるので、最終的には閉鎖するということになります。ただ、昨今は、保育需要が伸びていて、待機児童問題などもあり、一部の過疎地を除いて、利用者がいなくなるという状況は稀なケースになります。
また、認可保育園の場合は、利用者が少しでもいれば、急に閉鎖となるわけでもないので、ブラックであっても関係なくギリギリまで存続し続けます。
なぜブラック保育園は無くならない?
なぜブラック保育園が無くならないのかと言うと、
簡単に言うと、そのブラックな状況でも、成立してしまっているためと言えます。
- 働く保育士がいる
- 利用する保護者(園児)がいる
- 運営費を貰うことができる
という状態が成立しているためです。つまり、ブラックであっても、運営費を稼ぐことができていて、利益をあげることができているから、無くならないということです。
保育園において、この状況が成立しやすいのは、日本の認可保育園の仕組みも影響しています。
保育園の運営費は国や自治体から支給される
認可保育園の運営費は、雇用する保育士等の職員の人件費なども含めて、運営費として国や自治体から支払われます。一部、保護者の方は保育料を支払いますが、それは、運営費のほんの一部で、それだけで賄われているわけではありません。言ってしまえば、原資は税金ということになります。この金額は、預かっている園児の人数などによって、一定の金額が公定価格として決まっています。
認可保育園はそう簡単には潰れない
認可保育園は、自治体に認可されていて、利用者の申し込みなども自治体を通して行われる仕組みです。
保育園の認可は、施設の条件などを満たせば、自動的に認可されるわけではありません。そのエリアの保育需要などを考慮して認可の可否が判断されます。逆に言うと、認可されているということはその分の保育需要が見込まれているということになります。
そして、認可保育園として運営されているということは、その保育園が閉鎖された場合は、そこに登園している園児と預けている保護者が路頭に迷ってしまうことになります。それは、保育園だけの問題ではなく、認可をしている自治体の責任にもなります。そのため、保育園側としても、勝手な理由で閉鎖はできないことになっています。
また、自治体としてもブラックだから、法律に反しているからということで認可を取り消したり、保育園を閉鎖に追い込むということが難しくなります。 過去に、パワハラ問題などで保育士が一斉退職して問題になった認可保育園がありましたが、その時も運営者が変わる形で、保育園としての営業は継続されるということがありました。
このように、認可保育園はブラックだからとか、少々労働関係の法律を守っていないからと言って、そう簡単には潰れないという事情があります。
待機児童問題で保護者も選べない状況
ブラック保育園は、一般的に保育の質も低いことが多いです。職員の離職者が多かったり、非効率な業務があると、必然的に保育の質が低くなります。保育の質は高いけど、待遇はブラックという保育園はほとんどないでしょう。
ブラック保育園が無くなる条件として「利用者がいなくなった場合」ということを挙げましたが、保育の質の低い保育園を保護者が選ばなければ、自然とブラック保育園は淘汰されていくはずです。でもそうならないことにも理由があります。
一つは、保育の質は外部から判断しにくいということです。これから新たな保育園で働く保育士でも、保育園の質を判断するというのは難しいです。保護者の方も同様で、見学等ができたとしても、それで質を判断することは難しいです。
もう一つは、待機児童問題などが発生していて、保護者の方も預ける保育園を選べない状況になってしまっているということです。保護者の方も、自分の子を預けるのであれば、保育の質が高い保育園に預けたいと思うと思いますが、昨今は、待機児童問題もあり、預けられれば御の字という状況になっていて、どちらかというと預けられる場所に預けるということが重視されてしまっています。
そのため、保育園がブラックで保育の質も低いからと言って、利用者がいなくなるという状況ではありません。
なぜブラック保育園で働く保育士がいる?
ここまで、なぜブラック保育園は無くならないのかという点を紹介しましたが、なぜブラック保育園で働く保育士がいるのでしょうか。保育士がブラック保育園で働きさえしなければ、ブラック保育園は維持できないはずです。
ブラックだと知らずに入職してしまう
なぜブラック保育園で働いてしまう保育士がいるのかという理由の一つ目は、ブラックだと知らずに入職してしまうということです。当たり前ですが、ブラック保育園がうちはブラックですと言ってくれるはずもなく、知らずに入職してしまう人が多いです。
保育園は一つひとつが所謂中小企業のような、小さい組織であることが多いので、過去に働いていた保育士の評判なども出回りにくいです。そのため、新たに就職や転職をするという保育士の方が、保育園がブラックかどうかを見極めるには、求人情報や一回の見学や面接の時くらいしかチャンスがありません。その少ない機会でブラックかどうか見極めるのはなかなか難しく、就職してからブラックだっと気づいてしまうケースが多いです。
ブラック保育園は退職しにくい環境を作っている
また、ブラック保育園は保育士が退職しにくい環境を作っていて、一度就職した保育士も退職しにくい状況に置かれてしまいます。
- 退職なんて許さない
- 年度末までは退職させない
- 退職するなら許可を取れ
というような雰囲気をうまく作り出しています。
入れ替わりが激しくても成立してしまう
ブラックだと知らずに入職した場合でも、退職しにくい環境や雰囲気であっても、もちろん、ブラックだと気づいて、退職する保育士の方もたくさんいます。それでも、ブラック保育園が成立します。
それは、先程も書いたように、新たにブラックだと知らずに入職してしまう保育士を採用すれば良いためです。また、派遣保育士やパート保育士など、一時的に人手不足を穴埋めする方法もあります。そして、そもそもがブラック保育園なので、仮に、一時的に保育士が不足してしまったとしても、そこはブラック保育園なので、保育士のサービス残業や、一時的な配置基準違反の状態で運営を続けることもできます。
この、
- ブラックだと気づかせずに入職させる
- 辞めにくい環境にする
- いなくなったら適当に補充する
という、ある意味で、保育士からすると負のループの状況が、ブラック保育園が存続するための、働く保育士がいるという環境を作り出しています。