保育園で働く保育士の皆様。保育園を利用している保護者の方。
今回は、政府は「こども未来戦略方針」案における、保育士の配置基準の見直しの案について紹介します。これによって保育士一人一人の負担や安全面はどのように変わるのでしょうか?
その経験が参考になればと思います
現状の保育士の配置基準について
保育園は、適当な人数の保育士がいれば良いというわけではなく、子どもの人数に対して、必要な保育士の人数というのが基準として定められています。
年齢 | 保育士1人あたりの保育人数 |
---|---|
0歳児 | 3人 |
1~2歳児 | 6人 |
3歳児 | 20人 |
4歳児以上 | 30人 |
現在の保育士の配置基準に関しては、以下の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。
75年ぶりの保育士の配置基準の見直し
政府は「こども未来戦略方針」案において、75年ぶりの保育士の配置基準の見直しを考えています。
具体的には、「社会保障と税の一体改革」以降積み残された1歳児及び4・5歳児の職員配置基準について1歳児は6対1から5対1へ、4・5歳児は 30 対1から 25 対 1へと改善するとともに、民間給与動向等を踏まえた保育士等の更なる処遇改善を検討する。
※引用「「こども未来戦略方針」案」https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai5/siryou1.pdf
新たな配置基準案を図に表すと以下のようになります。
年齢 | 保育士1人あたりの保育人数 |
---|---|
0歳児 | 3人 |
1歳児 | 5人 |
2歳児 | 6人 |
3歳児 | 20人 |
4歳児以上 | 25人 |
※赤字が「こども未来戦略方針」案 による変更
改善の根拠は不明
なぜ「1歳児は6対1から5対1」「4・5歳児は 30 対1から 25 対 1」にすれば良いと判断されたのかがよくわかりませんでした。逆に考えると、0歳児を1対3で見るという状況は問題ない、と判断されたということになります。内部では様々な検討がされていると思いますが、根拠等がわかる資料等は見つけることができませんでした。
現状は案で、確定しているわけではない
「「こども未来戦略方針」案 」は「案」なので、確定しているわけではありません。今後、世論の反応などを見て、変更されることも十分に考えられます。
配置基準の見直しの実施時期に関しても未定
配置基準の見直しの実施時期に関しても現時点では未定になります。早ければ、令和6年度(2024年度)からということになると思いますが、前述した通り、猶予期間が設けられたり、保育士を手厚く配置した施設に運営費を加算して支給する方式が濃厚であるため、年度が変わったら急に今働いている保育園の保育士の人数の状況が変わるということは考えにくいです。
配置基準そのものの改定の可能性は低い
政府は現場(保育園の経営者)の混乱を危惧しているということがわかります。
小倉将信こども政策担当相は11日の記者会見で「保育現場に混乱が生じる可能性がある」などとして、配置基準そのものの改定を改めて否定した。
※「東京新聞 保育士の配置基準「75年ぶりの改善」と言ったのに…実際は配置増やした施設への加算のみ」https://www.tokyo-np.co.jp/article/243533
現場で働いている保育士は、働く保育士の人数が増えても混乱することはないので、保育園の経営者の混乱を危惧しているということになります。全国の保育園が同時期に新たな保育士を採用しなければいけなくなってしまうと、保育士を採用することができない可能性が出てきます。また、新たな基準を満たすために保育士を採用できなかったからといって、保育園の定員などを減らしてしまうと、既に通園している園児やこれからあらたに保育所に入園する子どもとその保護者に影響が出てしまうことになります。
このことから言えることは、猶予期間なしに、強制的に配置基準を変更するということは、ほとんど無いということです。やはり、現状の案通り、保育士を手厚く配置した施設に運営費を加算して支給する方式になるでしょう。
保育園で働く保育士の負担や安全面はどう変わる?
保育士の方は、現時点で出ている情報で確定した場合、保育園で働く保育士の負担や安全面はどう変わるのかというのが気になると思います。
仮に、75年前から変わっていない現状の保育士の配置基準ギリギリで運営しているという保育園であると仮定して考えると、新たな基準を満たそうとする場合に、保育園は新たに保育士を3人以上多く雇用する必要があります。
3人というのは、1歳児、4・5歳児も配置基準が変わるので、現時点が配置基準ギリギリだとすると、1歳児、4・5歳児で保育士が不足するためです。3人ではなく、3人以上なのは、保育士の配置基準というのは、すべての時間帯で満たさなければいけないです。保育園の開園時間は一人の保育士の勤務時間より長いですし、土曜日も開園している保育園が多いので、今が配置基準ギリギリで運営している場合は、3人保育士を増やしただけでは足りない時間ができてしまいます。そのため、3人以上を新たに採用しなければいけないということになります。もちろん、園児定員の規模が多い保育園では、より保育士の人数を増やす必要があるということになります。
ただし、現状の配置基準の見直し案では、あくまでも保育士を手厚く配置した施設に運営費を加算して支給するという方式で、義務ではないため、実際に基準より多くの保育士を採用するかどうかは、各保育園次第ということになります。
逆に、既に配置基準に対してある程度余裕をもって運営しているという保育園の場合、特に何も変わらないということが考えられます。その場合は、保育園が追加の補助金だけを得るということになります。そのような保育園であっても、保育士の給与などを急に上げるというのは難しいため、給与などが急に上がるということもは無いでしょう。
また、新たな保育士を採用するということは、毎月保育士に対して支払う給与だけではなく、採用活動のための費用もかかりますし、面接や手続きにも人員を割く必要があります。そして、ただでさえ、保育士が不足しているという状態であるため、新たな配置基準が適用された瞬間から、今働いている保育園の保育士の人数が増えて、負担が減るということは無いでしょう。
今より保育士の負担が増えて、大変になるということはありませんが、現在の案では、現場の保育士の負担が大きく減るということは無いかもしれません。園児の園全面についても同様で、あくまでも、保育士を手厚く配置した施設に運営費を加算して支給するという方式であれば、政府は、現状の配置基準でも安全面は既に担保されていると判断しているということになります。
まとめ:保育士の配置基準の見直しはいつから?負担はどう変わる?
今回は、政府は「こども未来戦略方針」案における、保育士の配置基準の見直しの案について紹介しました。
年齢 | 保育士1人あたりの保育人数 |
---|---|
0歳児 | 3人 |
1歳児 | 5人 |
2歳児 | 6人 |
3歳児 | 20人 |
4歳児以上 | 25人 |
※赤字が「こども未来戦略方針」案 による変更
2023年7月25日時点では、まだ案の段階なので、今後どう変わるかはわかりません。ただ、必要な保育士の人数が今より多くなるというのは、保育園で働く保育士にとっては、悪いことでないです。一人ひとりが声をあげれば、保育士にとって、よりよい案に変わる可能性もあります。