1歳児は赤ちゃんだった0歳児から大きく変わり自我が芽生えだし心身ともに成長する年齢です。また、2歳の誕生日を迎えた早い子ではイヤイヤ期がはじまり、保護者も子育てに悩み始めることが多くなる時期です。そのため、経験している保育士でも保育をする上で少し難しいと感じる保育士が多くいると思います。
ここでは1歳児の発達特徴、保育目標、保育をする上でのポイント等を解説していきます。1歳児保育の楽しさや苦労を知り、自分の保育の質の向上に役立ててみて下さい。
1歳時の担任をした経験があります
その経験が参考になればと思います
1歳児の子どもの姿
保育園での1歳児とは、1歳から2歳の誕生日を迎える子のことを1歳児と言います。同じ1歳児でも4月生まれと3月生まれでは大きく差があるのがこの時期です。そのため発達の段階も細かく月齢別に知っておく必要があります。
1歳児の発達段階
1歳児の発達段階は月齢によって大きく差が出てきます。1歳児の中でも4月に誕生日を迎えた子は進級の時点で2歳0ヶ月なのに対し、3月生まれの子は1歳1ヶ月になります。ここでは1歳児のみの発達段階を解説しています。発達には個人差があるため、個々の成長を正しく理解するためにも大まかな月齢別の発達段階を理解しておきましょう。
1歳〜1歳3ヶ月
- 伝い歩きから数歩、1人で歩行ができるようになる。
- 完了食になる。
- スプーン、フォークを持ち自分で食べようとする。
- コップで飲むことができるようになる。
- 「ちょうだい」や「ありがとう」のやりとりを覚えて真似ようとする。
- 特定の保育者に安心感を覚え、甘えたり泣いてアピールをする。
- 興味のある玩具を見つけ1人遊びに夢中になる。
1歳3ヶ月〜1歳6ヶ月
- 歩行が安定し、歩くことを楽しむ。
- 普通食になり、スプーンを持ち自分で食べようとする。
- 好き嫌いが出てくる。
- 意思表示が増え、嫌と拒否することが出てくる。
- 周りに興味が出てくる。
- 音楽や歌に合わせて体を動かすことが増える。
- 1語文「ママ」「ぶーぶ」「わんわん」などを話すようになる。
1歳6ヶ月〜1歳9ヶ月
- 歩行が安定し走ることが増える。
- 食べこぼしは多いがスプーンで食べることに慣れていく。
- 大人の話を理解して動くようになる。
- やってほしいことを動きで表現する。
- 気分のムラが増え、甘える子も多くなる。
- 好奇心が増えていく。
- 2語文「わんわん いたね」「パン たべる」などを話すことも。
1歳9ヶ月〜2歳
- 歩行が安定し長い時間歩けるようになる。
- 食事に対する欲がでる一方で好き嫌いも増える。
- 保育者や友達の名前を覚えて呼ぶようになる。
- 自我が芽生え、嫌!とはっきり言うようになる。
- 自分で!と自分でやりたがることが増える。
- 自己主張が増え、友達の物をとるようになる。
- 2語文が増え、語彙も増える。
2歳〜2歳半
進級してすぐに2歳の誕生日を迎えた子でも1歳児として保育園にいるため、2歳の特徴にも少しだけ触れておきます。
– 走る、登る、飛ぶなどができる。
– 歌を覚え、歌うことができる。
– 自分で食事ができる。
– 自己主張がさらに強くなり泣いて訴えることも増える。
– 3語文や大人との会話が繋がるようになる。
– 「やって」など自分の欲求を言葉で伝えることができる。
– 友達との関わりが増える一方でトラブルも増えてくる。
– オムツやズボンの着脱を自分で行うことができるようになる。
1歳児の全体的な特徴と保育士の関わり方
上記のように1歳児は同じクラスでも成長の差がとても大きいクラスです。ここで領域別のおおまかな成長と関わり方を見ていきます。
言葉
喃語から、1語文→2語文へと話す言葉が増えていきます。言葉の成長が著しい時期で、大人の言葉をよく聞いています。
集団の中では、保育士の言葉を理解して動こうとするようになりますが、自分の気持ちを言葉で伝えるのはまだ難しい時期です。
言葉は特に個人差があり、月齢の成長よりも言葉の発達が遅いと感じることはよくあります。言葉は出なくても大人の言葉を理解しているようであれば耳は聞こえているので、焦らずじっくり関わっていきましょう。また、言葉の発達を促す関わり方として保育士が子どもの仕草や行動に言葉で反応してあげることが大切になります。
興味のあるものを見つけて指差しをした際は、「あれはくるまだね」「これ、おいしいね」「りんご、たべる?」など言葉で反応するようにしましょう。また絵本をたくさん読むことで単語を習得していきます。
話すことが楽しい、言葉での意思疎通ができた!と思うことで子どもの言葉はどんどん発達していきます。保育士は楽しいと思えるようゆっくりとした口調で積極的に話しかけるようにしましょう。
運動
1歳児は歩行が安定し行動範囲が大きく広がります。そして歩く・走る・飛ぶ・登る等基本的な動きが身についてきます。保育園では他児と2人で手を繋いで歩くこともできるようになり、滑り台を1人で滑る、ボールを投げるなどもできるようになります。
手先の細かい動きもできるようになり、つまむ・めくる・クレヨンを持つなどができるようになります。一方で、転倒も増え怪我が多くなるのもこの時期なので注意が必要です。
運動面での発達も個人差があり、月齢によって大きく差が出るため散歩に出る際は無理をしすぎずバギーやおんぶ紐等を利用するようにしましょう。また、転倒が増えるので道を歩く際には十分気をつけ歩く速度にも気を配りましょう。たくさん体を動かしたい時期なので、十分な広さがあるところでのびのび遊ぶ時間を多く取ることで静と動のバランスをとりながらストレスなく過ごすことができます。
食事
離乳食の進みは各家庭によって様々なため中々食材摂取が進まず完了食、普通食とスムーズに移行できないこともあります。月齢の成長を目安にできるだけお家で進められるよう保育士からも声をかけましょう。
1歳児は全員が普通食(幼児食)に移行してからできるだけ自分で食事ができるよう介助をしていきます。まだまだ手を使っての掴みたべをしてしまう子もいますがスプーン、フォークは必ず用意し、グーの持ち方で食べすすめるよう促します。初めは食べこぼしも多いですが、手を使わず食べることに慣れていってもらうことを第1に考え食事用エプロンなどを上手く活用しましょう。
好き嫌いも出てくる時期ですので保育者の声がけが大切になってきます。好きなものと苦手なものを混ぜてみたり、乗せてみたりしながら完食できた時には綺麗になったお皿を見せながらたくさん褒めることで達成感を感じてくれます。
1歳児の食事の悩みは保護者からもよく相談されることがあり、家庭と園とでムラがあることもあります。園でしっかり食べているなら‥と安心する保護者の方もいますので食事の様子はよく伝えていくようにしましょう。
排泄
1歳児からトイレに座って排泄をしてみようとするようになります。また、座ったタイミングが良いとトイレで排泄ができることもあります。
トイレを怖がる子もいるので無理に座らせるといことはせず、子どもたちが自主的に座ってみようとすることでトイレへのイヤイヤがだいぶ減らせます。排便がオムツに出た際に、出たよと自分で教えてくれる子もいます。
オムツに出た際の不快感がわかってくる時期ですので、定期的なトイレへの促しと便が出た際はすぐに綺麗にしてあげましょう。
早い子では2歳になるとオムツが取れる子もいます。
睡眠
1歳児は生活のリズムが整ってくるので、朝寝等はせず、昼食後の1度のお昼寝で1日を元気に過ごすことができるようになります。
園では午前の活動でしっかり動の動きを入れたり、頭をつかう遊びや生活活動を取り入れ、ご飯を食べて午睡に入る。というリズムをしっかり作ることでスムーズに午睡に入ることができます。
午睡前は特に動の動きを減らし、絵本等で静の時間を作るようにしましょう。寝かしつけの際はオルゴール等をかける園もありますので上手く活用しましょう。
遊びと人間関係
1歳児のはじめは1人遊びが多く、友達との関わりは少ないことが多いです。しかし月齢の成長とともに他児への関心が増え、玩具の取り合いやトラブルがとても増えてきます。
特に言葉が出ない児は手が出やすく、噛みつき等も増えてしまい常に気をつけて見守る必要があります。子どもの気持ちに寄り添い共感しながら危ないことやダメなことはしっかりと伝えていきましょう。
1歳児は月齢の成長とともに遊び込める玩具も増えてきます。ブロックやおままごとを用いてのごっこ遊びも少しずつできるようになってきます。
保育目標と書き方のコツ
保育目標については保育所保育指針や、年間の計画を載せている保育雑誌を参考にした上で前年度の子どもの姿を確認しながら計画を立てていきましょう。
乳児保育の計画で大切なことは、集団と個々の育ちの両方を見通した計画を立てることです。個々の育ちで大きく差が出る時期ですので、その時期の育ちの特徴を理解した上で計画を立てていくことが大切になります。
年間
年間指導計画は個々の記載はほとんどないため、集団での目標になります。年間計画は項目毎に細かく記載が必要になります。ここでは1歳児の年間計画の大きな目標の例をいくつか挙げておきます。
- 保育者との信頼関係を深め、安心した環境の中でのびのび過ごす。
- 探索活動を通して様々な物への興味関心を広げる。
- 基本的生活習慣を身につける。
- 言葉の理解や発語を促し、言葉でのコミュニケーションを楽しむ。
- 食事・排泄・着脱等の経験を通して自立心を育てる。
月間
月間指導計画は毎月立てる指導計画になります。月間は個人の目標を記載する園もあり、個々の成長に合わせた目標を考えていきます。
月の目標は時期や行事の有無によって大きく変わってきます。この月に育って欲しい姿を記入し、その月の最後に見返して反省を記入することで次の月の目標が立てやすくなります。
年間指導計画と月間指導計画は照らし合わせながら考えていくようにしましょう。
週日案
週の計画とその日の計画は1歳児全体の計画となります。
「今週は天気が良さそうなので戸外活動を中心にして、身体的な成長を促そう。」
「行事が近いのでこの製作を取り入れ季節の変化に興味を持ってもらおう。」
など、製作と戸外活動のバランスを考えながら、週日案を考えていきましょう。
個人の記録
毎月の仕事に個人の記録を書く園もあります。個々の目標を振り返った上で
養護 健康 人間関係 環境 言葉の領域に絞って記録をすることで発達の状況がわかりやすく、見返しやすくなります。成長が著しい時期だからこそ、子どもの小さな成長も見逃さず記録できるようにしておきましょう。
1歳児の保育
ここで1歳児の保育の特徴を挙げていきます。
配置基準
1歳児の保育士の配置基準は、国が定めた認可保育園の基準によると
保育士1人に対し、1歳児6名
となっています。しかし県や市によって独自の配置基準を示しているところもあり、5対1や4対1と比較的保育がしやすい環境になっている園もあります。
担任
1歳児は、園の規模にもよりますが、基本的に複数担任になることが多いです。多いところでは4、5人で担任していることもあり、保育士間でのやり取りが少し難しく感じることもあるかもしれません。
1日の流れ、過ごし方
ここで1歳児の主な1日の流れの例を紹介します。
7時〜9時 順次登園、合同保育での自由遊び、排泄、オムツ替え
9時半頃 朝の会、朝おやつ
10時頃〜 主活動[戸外遊び、散歩、製作、自由遊び等]
11時頃〜 排泄、給食
12時過ぎ〜 排泄、午睡
14時半頃〜 起床、排泄
15時〜 午後おやつ
15時半〜 帰りの会、順次降園、自由遊び
17時以降から順次合同保育
遊び
1歳児は1年間で遊び方が大きく変わります。進級したては月齢が低いため個々での遊びが多く、玩具は個々で遊べるものや興味のあるものを出してあげることで遊び方を試行錯誤していきます。初めは遊び込めず飽きやすくなっているため、状況を見て玩具を変えていきましょう。
段々遊び方が身に付いてくると、おままごとやブロック等で遊び込めるようになるので、保育士も一緒に遊びを楽しみましょう。
早い子ではごっこ遊びを楽しめるようになってくるので、遊びをリードしてあげることで楽しさを感じられます。一方で自己主張とともに玩具の取り合いがとても増えてきます。
互いの気持ちを尊重しながら、遊びにも順番があることを伝えていきましょう。
戸外では走れるようになると、追いかけっこを楽しめるようになります。保育士が「待て〜!」と追いかけるだけで逃げるということを覚え、簡単な追いかけっこが成立するようになります。
1歳児保育のポイント
1歳児は個々での差が大きい時期なため、保育も難しくなります。ここで1歳児保育のポイントを上げていきます。
関わり方
1歳児の最初は環境の変化から不安定になる子が多くいます。最初の関わり方で大切にすべきことは、特定の保育士との間での安心感を感じられるようにすることです。
自分の居場所はここなんだ、この人といることで安心して自分を出せる。
と思えるよう、子どもとのスキンシップは大切にしていきましょう。
1歳児の後半は自我が芽生え、自己主張が増えてきます。自己主張をするということは安心して自分を出せている。という表れでもあります。何に対してもイヤイヤしてしまう時期で保育士も保護者も疲弊してしまうことがありますが、子どもの大切な成長と捉え、「嫌だったよね」と共感し、子どもの気持ちに寄り添った保育を心がけていきましょう。子どもは気持ちが満たされ、切り替えがうまくいくと嫌だったことも案外すんなりと受け入れることもあります。
気をつけること
1歳児は成長に差があり、個々での関わりが大切になってきます。また、体の発達とともに行動範囲が広がり好奇心も旺盛になります。
保育をする上で特に気をつけることは転倒等による大きな怪我、他児とのトラブルによる噛みつきや引っ掻きです。動けるようになってきた反面、転倒から顔に傷をつくることがとても多くなりますので遊び等の環境設定には十分気をつけるようにしましょう。
1歳児保育士の仕事内容
ここで1歳児の担任になった際に、保育士が行う仕事内容をまとめていきます。
1歳児の書類
1歳児保育士の書類仕事は園によっても違いますが以下のものがあります。
- 年間指導計画
- 月間指導計画
- 週案
- 日案
- 個人の記録
- 連絡帳記入
環境設定
1歳児の保育環境は年度の最初と最後では大きく変わります。これは1年での成長が著しい1歳児だからこそで、保育者は成長に合わせて日々環境を変えていく必要があります。
最初は安心できる環境作りが大切になります。次第に動きが増えてきたら危険なものや特に必要のないものは保育室には置かず自由に動ける環境にしましょう。
保育者の言葉がわかり、意思疎通が取れるようになれば部屋を走らない等の約束事が守れるようになるので机を配置しながら遊び込める環境を作っていくと良いでしょう。
後半は他児とのトラブルが増えるので周りをがよく見れるような環境にすることも大切になります。
保護者対応
保護者対応も1歳児担任の大切な仕事になります。自己主張が増えることで保護者の悩みも増えてきます。特にイヤイヤ期の対応はどうすべきか悩む保護者が多いので園で効果のあった対応等を伝えて見ましょう。イヤイヤ期は必ず終わりが来ます。保育士は保育のプロとしてどっしりと構え、保護者の悩みに寄り添いながら丁寧な対応を心がけましょう。
1歳児保育の良さ
1歳児保育は大変。と思う保育士は多くいます。成長の差が大きい中での集団保育はとても難しいですよね。
でも何より1歳児の子どもたちはとにかくかわいいです。愛着関係が形成されることで懐いてくれるため、日々癒されることが多くありました。また、心身ともに大きな成長を感じられるのもこの時期なため、1年を通してのやりがいを感じられます。
保護者の方とも一緒に子育てをしているような感覚になるため、さらに絆が深まり成長を一緒に喜び合えることは保育士としても大きな成長になります。
乳児期にしか味わえないかわいさを知ることができるのが1歳児保育の良さであると私は感じます。
1歳児保育の大変さ
1歳児保育の大変さは正直数えきれないほどあります。
中でも1番大変なのがイヤイヤ期と呼ばれる時期です。その時は突然やってきて、今までできていたこと、楽しんでいたことを急に拒否し出します。
保育士もあらゆる手をつかってみますが本当にどうにもならないということもたくさんあります。そんな時は無理をせず他の保育士に助けを求めたり、少し保育から離れてみる時間をつくるようにしましょう。
イヤイヤ期は子どもの成長でいつか必ずおわる
と胸に刻んでおくことで少しだけ保育が楽になります。
まとめ
1歳児の発達特徴と保育のポイントについて解説していきました。1歳児は成長が著しく保育園の中でも担任をするのに難しい年齢の1つです。
月齢での成長を知っておくことで保育士の関わり方も変わってきますので、発達段階をしっかりと踏まえておきましょう。1歳児を1年間担任してみることで、保育士としての自分も大きく成長できたと感じられる年齢です。
担任になった際は個々の成長をよく見ながら楽しく保育をしていきましょう!