派遣で働く保育士の皆様。
現在、派遣の契約期間の途中だけど、派遣されている保育園での勤務を辞めたいという方もいらっしゃるかもしれません。働いている保育園や、派遣会社に不満があるというような理由は様々あると思います。そんな場合に、契約期間は絶対に満了しなければいけないのか、それとも、自分の都合で辞めてもよいのかということを悩んでいる方もいらっしゃると思います。
今回は、このような方向けに、派遣保育士が契約期間中に辞めたいときはどうすれば良いのかという点を説明します。
※参考「厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク 派遣労働者の皆様へ」https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai15/dl/01a.pdf
その経験が参考になればと思います
派遣保育士はやむを得ない事由がないと契約期間中には退職できない
いきなり本題ですが、派遣保育士はやむを得ない事由がないと契約期間中には退職できないとされています。
派遣保育士の契約期間中の退職は、契約の破棄にあたるとされています。民法では、契約の解除についてやむを得ない事由がある時に契約が解除できるとされています。
民法628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
「やむを得ない事由」とは?
やむを得ない事由と言う表現は曖昧ですよね、一般的にやむを得ない事由とはどのようなことを指すことが多いのでしょうか。それは以下のような内容が挙げられます。
- 病気等が理由の場合
- 引っ越しが理由の場合
- 家族の介護を理由とする場合
- 派遣先の保育園でパワハラなどを受けている場合
- 派遣先の保育園が労働基準法などを遵守していない場合
- 仕事内容などが契約時に提示されたものと違うという場合
これらについてそれぞれ説明しています。
病気等が理由の場合
自分の病気等が原因で就業が難しくなった場合はやむを得ない事由に該当する場合が多いようです。医師等の就業不能であることを示す診断書などがあるとより確実かもしれません。
引っ越しが理由の場合
家族等の事情により引っ越しをしなくてはいけない場合もやむを得ない事由に該当する場合があります。引越し先によっては通勤できなくなってしまうこともあるので、やむを得ないと言えます。
家族の介護を理由とする場合
家族の介護などが必要になった場合もやむを得ない事由に該当する場合があります。
派遣先の保育園でパワハラなどを受けている場合
派遣先の保育園の職員等からパワハラなどを受けている場合も退職ができる場合があります。
ただし、パワハラという行為の定義は非常に曖昧で客観的にも証明がしにくいです。
参考までに、厚生労働省 あかるい職場応援団 パワーハラスメントの定義を引用します。
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
より詳しくは以下のホームページで内容を確認することができます。
※参考「厚生労働省 あかるい職場応援団 パワーハラスメントの定義」https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about
パワハラを受けているという場合は、どのような言動・行動をされたのかという点をメモなどに取り証明できるようにしましょう。
また、派遣会社は派遣先の保育園に是正するように伝えますという内容で対応する可能性もあります。余計に派遣先の保育園に居づらくなってしまうこともあるので、パワハラなどを指摘して退職する場合は、必ず、辞めるという意思を明確に示しましょう。
派遣先の保育園が労働基準法などを遵守していない場合
派遣先の保育園が労働基準法などを遵守していない場合も退職をすることが可能です。例えば、持ち帰りの仕事があったり、労働時間に含まれない残業がある場合、休憩を正しく取れていないなどの場合が該当します。
ただし、この場合も、派遣会社は派遣先の保育園に是正するように伝えますという内容で対応する可能性もあります。その場合は、退職する理由が失われてしまうことになります。そのため、派遣保育士を契約途中で退職するということを目的とする場合は、あまり適さない可能性もあります。
また、これらについても同様に、いつ何時間どのような形でサービス残業や持ち帰りの仕事があったのかという点をきちんと証拠として残しておきましょう。
仕事内容などが契約時に提示されたものと違うという場合
事前に契約していた仕事内容の範囲を超えて派遣先の保育園に仕事を任されている場合なども、派遣保育士が契約期間中に辞めることができる理由になる可能性があります。
保育園の場合は、
保育補助としての契約なのに担任を任された
というような場合が該当する可能性があります。
この場合も、派遣会社は派遣先の保育園に是正するように伝えますという内容で対応する可能性もあるので注意しましょう。
派遣保育士が契約期間中に辞める選択肢まとめ
ここからは、派遣保育士が契約期間中に辞める選択肢まとめます。
前述のやむを得ない事由を理由にする
選択肢の一つは前述したどれかを理由にするということです。
- 病気等
- 引っ越し
- 家族の介護
- 派遣先の保育園でパワハラなどを受けている
- 派遣先の保育園が労働基準法などを遵守していない
- 仕事内容などが契約時に提示されたものと違うという
ただし、先程から書いているように、派遣会社から保育園に働きかけることで改善が可能な場合があります。もちろん、改善されれば継続して勤務したいという場合であればそれで良いですが、有無をいわさず退職をしたいという場合は、退職をする理由がなくなってしまう可能性もあります。やむを得ない事由で退職する場合は、対応されてしまったり、引き止められてしまう可能性も考慮に入れましょう。
正直なところ、どうしても今すぐやめたいけど理由が無いという場合は、いくらでも理由付けはできると思います。派遣会社と良好な関係を保つ必要が無いのであれば、嘘をつかずに、やむを得ない事由に該当する理由付けは工夫でどうにかできるはずです。
契約期間を終えるまで耐える
契約期間中に辞めるという方法になってはいませんが、契約期間を終えるまで耐えるというのも選択肢の一つになります。辞めるということが決まっていれば、気持ちが楽になり頑張れるということもあるかもしれません。
もちろん、今が病んでしまうほど辛いということであれば、耐える必要はないと思いますが、ギリギリ頑張れるという人は選択肢として考えてみると良いかもしれません。
この方法であれば、保育園や派遣会社との関係も悪化させずに、辞めることが可能です。特に、派遣会社とは引き続き別の保育園に派遣されたいという場合に、良好な関係を保っておく必要がある場合もあるので、その点も考慮に入れたいです。
派遣会社への退職の意思の伝え方
退職の意思は、派遣されている保育園ではなく、派遣会社に伝えます。自分の担当者などに、電話などで退職をしたい旨を伝えましょう。直前ではなく、できるだけ早い段階で派遣会社に伝えるのが理想です。直前だと、特に保育士の場合は保育園に大きな迷惑がかかるため、理由があったとしても強く引き止められてり・反対される可能性が高くなるためです。直前でなければ、理由がきちんとしていれば、派遣会社もなかなか引き止めにくいはずです。
また、次の仕事はどうするか、その派遣会社での勤務を継続したいのかどうなのかなども事前に決めておくと良いでしょう。
まとめ:派遣保育士が契約期間中に辞めたいときはどうすれば良い?
派遣保育士はやむを得ない事由がないと契約期間中には退職できません。
民法628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
やむを得ない事由は一般的には以下のような場合とされていることが多いです。
- 病気等が理由の場合
- 引っ越しが理由の場合
- 家族の介護を理由とする場合
- 派遣先の保育園でパワハラなどを受けている場合
- 派遣先の保育園が労働基準法などを遵守していない場合
- 仕事内容などが契約時に提示されたものと違うという場合
派遣保育士が退職する方法としては、「やむを得ない事由を理由にする」、「契約期間を終えるまで耐える」の二択になります。
むを得ない事由で退職する場合は、派遣会社と保育園に対応されてしまったり、引き止められてしまう可能性も考慮に入れましょう。また、実際の個々のケースがやむを得ない事由に該当するかどうかは、自分自身では判断できない場合も多いと思うので、専門家の意見を聞いてから行動するということも必要です。
ただ、正直なところ、どうしても今すぐやめたいけど理由が無いという場合は、いくらでも理由付けはできると思います。派遣会社と良好な関係を保つ必要が無いのであれば、嘘をつかずに、やむを得ない事由に該当する理由付けは工夫でどうにかできるはずです。