保育園等で働く保育士の皆様。保育所保育指針についてしっかり理解していますか。
保育所保育指針は厚生労働省が出している保育園向けの指針です。保育士本人も保育所の基本である保育指針は必ず理解しておくべき内容だと思います。
すでに保育士として働いているけれど改に理解しなおしたいという方やこれから保育士を目指すという方向けに「保育所保育指針」について改めて解説します。
そもそも保育所保育指針ってなに?
保育所保育指針は1965年に最初に制定された日本の保育所における基本的な運営指針になります。保育所保育指針は厚生労働省によって定められています。
保育所保育指針とは何かについては、厚生労働省が出している保育所保育指針解説で以下のように述べられています。
保育所保育指針は、保育所保育の基本となる考え方や保育のねらい及び内容など保育の実施に関わる事項と、これに関連する運営に関する事項について定めたものである。
つまり、保育所保育指針には、保育園の運営者はもとい、保育士が保育をする上で基本とすべき考え方などが記載されています。
多くの保育園はこの保育所保育指針も基本的なベースとして、それぞれ保育理念や保育観を掲げていることになります。逆にいうと、
保育士本人も保育所の基本である保育指針は必ず理解しておくべき内容になります。
幼稚園は「幼稚園教育要領」認定こども園は「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」は別に定めらている
ちなみに余談にはなりますが、幼稚園は「幼稚園教育要領」が、認定こども園は「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」はそれぞれ別に定められています。保育所とは管轄や役割が異なるので、それぞれに指針がある形になります。
直近でこれらの施設形態を跨いで、転職をしたという方はそれぞれを見比べてみると良いと思います。
ただし、2018年の保育所保育指針と合わせて、幼稚園の「幼稚園教育要領」、認定こども園の「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」も改定されていて、幼児教育の内容については共通化されています。
そのため、幼稚園から保育園に転職した、保育所から認定こども園に転職したというような場合でも、幼児教育の内容は同一なので、今までの指針とまるっきり内容が変わってしまうということは無いので、その点は安心してください。
保育所保育指針の概要
保育所保育指針は以下の目次構成となっています。
第1章 総則
第2章 保育の内容
第3章 健康及び安全
第4章 子育て支援
第5章 職員の資質向上
第1章の総則には、保育所保育に関する基本原則、養護に関する基本的事項、保育の計画及び評価、幼児教育を行う施設として共有すべき事項などについて書かれています。
第2章はの保育の内容では、第一章の保育所保育に関する基本原則の「保育の目標」に関してより具体的な内容を定義しています。
第3章では、子どもが健康で安全に過ごすための指針を定義しています。
第4章では、保育所における保護者に対する子育て支援について定義しています。保育所は、子育て支援の場でもあります。
そして、第5章では、一人一人の職員についての資質向上及び職員全体の専門性の向上について記載されています。まさに保育園及び保育士がどのように保育の質を担保していくべきかという点になります。
より詳細については、https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/36b55701/20231016_policies_hoiku_66.pdfを確認して下さい。
保育所保育指針は改訂される<最新の改訂は2018年>
厚生労働省によって出されている保育所保育指針は定期的に改訂されています。これは、時代などの変化における子育て環境の変化などに伴い、保育所のあり方も変化しているためです。
直近の改訂は2018年3月になっています。その前の改訂が1990年、2000年、2008年という風になっているので、およそ十年程度ごとに改訂がなされています。
とりわけ2018年の改訂では、2015年から施行されている「子ども・子育て支援新制度」の影響も大きく受けているとされています。この制度は、「量」と「質」の両面から子育てを社会全体で支えるということが主たる趣旨の制度になります。
そのため、1、2歳児を中心に保育所利用児童数が増加している背景などもあり、保育をめぐる状況の変化が反映されている形になります。
最新の改訂<2018年>の内容や要旨は?
最新の改訂<2018年>では以下の内容の改訂が行われています。
(1)乳児・1歳以上3歳未満児の保育に関する記載の充実
(2)保育所保育における幼児教育の積極的な位置づけ
(3)子どもの育ちをめぐる環境の変化を踏まえた健康及び安全の記載の見直し
(4)保護者・家庭及び地域と連携した子育て支援の必要性
(5)職員の資質・専門性の向上
乳児・1歳以上3歳未満児の保育に関する記載の充実については、先程も書いたように、1、2歳児を中心に保育所利用児童数が増加していることから記載の充実が図られています。
また、東日本大震災などの災害の影響もあり、子どもの育ちをめぐる環境の変化を踏まえた健康及び安全の記載の見直しも行われています。
また、特質すべき点としては、保護者・家庭及び地域と連携した子育て支援の必要性についてです。「保護者が子どもの成長に気付き子育ての喜びを感じられるように努める」ことを明記して記載内容が整理されています。
より詳細については、https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/36b55701/20231016_policies_hoiku_66.pdfを確認して下さい。
保育所保育指針の最新版はどこで手に入る?
保育所保育指針の最新版は子ども家庭庁がインターネット上で公開しています。以下からダンロード、参照することが可能です。
また、子ども家庭庁は合わせて、保育所保育指針の解説も公開しています。解説ではよりわかりやすく保育所保育指針について説明しています。
手っ取り早く確認したい場合は、これらを利用すると良いと思います。また、現在、保育園に勤めている場合は、その勤めている保育園にも、必ず冊子化されている保育所保育指針が置かれていると思います。
保育士として迷った際は保育所保育指針に立ち返ると良いかも
働く保育士としては、なにか保育方針、理念、保育観などで迷った場合は、まずは保育所保育指針に立ち返ると良いかもしれません。
保育士として現場で働いていると同僚や先輩などと考え方が合わなかったり、園の方針や考え方にどうしても納得できないということはよくあることだと思います。
園の保育理念や個人の保育観には正解・不正解がない場合が多いですが、保育所保育指針はすべての保育園がベースにしている指針になります。
改めて保育所保育指針に立ち返ることで、自分や保育園の間違いに気づくことができるかもしれません。
保育所保育指針を軽視している保育園は要注意
働く保育士の目線では、保育所保育指針を軽視している保育園は要注意です。特に最近では、保育の定員を確保するために保育所がかなりの勢いで乱立していて、質の面で不安がある保育園もあるようです。
特に、園長や施設長などの園の代表者が改訂の趣旨を理解していなかったり、無関心である場合には注意が必要です。
例えば、保育所保育指針には子どもが安全に過ごすための、事故や災害への備えに関しても記載がされています。なにか事故が起きてしまった際に、現場の保育士として責任を取らされてしまうこともあるかもしれません。
また、すべての保育園は保育所保育指針を基準として、保育園の運営につとめていると思うので、普通の保育園ではありえない保育士としての行いなどが身についてしまっているかもしれません。転職した際などに、そのような行いをしてしまってなにかトラブルなどの原因になるかもしれません。
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転職の際などは、保育園の保育所保育指針の考え方や理解度などについても、保育理念などと合わせて聞いてみると良いかもしれません。
保育士資格があるからOKというスタンスではいけない
保育士の資格には、現在のところ更新制度などは存在しませんが、保育士資格があるからOKというスタンスではいけないです。
現状の保育士の待遇などに不満がある場合でも「保育所保育指針の改訂とかは知らないです。保育士資格を持っています。経験年数も長いです。国は給料上げてください」では通らないと思います。
おそらく、これからは保育士不足もやや落ち着く時代になってくると思います。その際には、今のようにとりあえず経験年数があれば処遇改善費としてが給料を上乗せして貰えるという時代ではなくなってくるかもしれません。
そうなったら、国の掲げる保育所保育指針をしっかり理解して質の向上に務める姿勢も保育士としてより重要になってくるかもしれません。
【まとめ】保育所保育指針は保育士のバイブル!
保育所保育指針は日本の保育所における基本的な運営指針になります。すべての保育園では、この指針をもとに運営がなされているはずです。
そのため、保育士本人も保育所の基本である保育指針は必ず理解しておくべき内容になります。
保育所保育指針の最新版は厚生労働省がインターネット上で公開しているので、すぐに参照できますし、保育園にも必ずあると思います。
保育所保育指針を軽視している保育園は要注意ですし、保育士本人も保育士資格があるからOKというスタンスではいけません。
経験を積んで改めて見返してみると新たな理解を得られることもあるかもしれません。保育所保育指針は保育士のバイブルとも言える大切な共通指針になるので、改めて理解しなおしてみると良いと思います。