保育に携わる皆様。ベビーホテルという種類の保育施設をご存知ですか?
ベビーホテルは数ある保育施設の中でも少し特殊な形態の保育施設になります。名前から想像すると、「赤ちゃんのホテル」という印象になると思いますが、それは少し実態とは違います。
今回は、ベビーホテルでの仕事内容、保育士が働く長所短所について紹介します。また、ベビーホテルの求人を探す際の注意点なども合わせて解説しています。
※参考 https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000654374.pdf 「厚生労働省 平成 30 年度 認可外保育施設の現況取りまとめ」
ベビーホテルについては、厚生労働省 平成 30 年度 認可外保育施設の現況取りまとめの情報を参考にしています
その経験が参考になればと思います
ベビーホテルとは?
ベビーホテルとは、厚生労働省の定義によると 以下のいずれかに該当する施設を常時運営している認可外保育施設 になります。
- 夜8時以降の保育
- 宿泊を伴う保育
- 一時預かりの子どもが利用児童の半数以上
つまり、認可外保育施設のなかでも、預かる子どもの夜間保育や宿泊などを伴う施設のことになります。ちなみにとてもややこしいですが「認可外保育施設」とは児童福祉法に基づく認可を受けていない保育施設のことで、「認証保育所」などの地方単独保育事業の施設も対象に含まれています。
認可保育園以外の保育施設は基本的に認可外保育施設で、そのなかでも形態によって様々な呼称のされ方をするので注意が必要ですね。厚生労働省の定義を満たしていたとしても、自らはベビーホテルとは名乗らず、単に認可外保育施設や認証保育所と名乗っている保育園も存在します。それ自体は間違っていることではないためです。
全国のベビーホテルの数は?
平成31年3月現在の厚生労働省の調査によるとベビーホテルは全国に1,261施設が存在します。認可外保育施設の数が、12,027箇所なので、認可外保育施設の全体の1割程度がベビーホテルという状況になります。意外と多いんですね。
ベビーホテルの開所/開園時間は?
ベビーホテルの開所時間は大きく以下のように分類されます。
- 24時間
- 宿泊 ・・・ 午前 2 時から午前 7 時までの時間帯の全部又は一部を含んで開設している
- 深夜 ・・・午後 10 時から翌日午前 2 時までの時間帯の全部又は一部を含んで開設しているもの
- 夜間 ・・・ 午後 8 時から午後 10 時までの時間帯の全部又は一部を含んで開設しているもの
- 昼間のみ ・・・ 午前 7 時から午後 8 時までの時間帯の全部又は一部の時間帯に開設している施設であって、一時預かりをしているもの
それぞれの施設数の割合としては以下のようになります。
- 24時間 ・・・270施設
- 宿泊 ・・・100施設
- 深夜 ・・・76施設
- 夜間 ・・・308施設
- 昼間のみ ・・・507施設
ベビーホテルはどのような方が利用する?
ベビーホテルは基本的に認可保育園に入ることができない方や、夜間に仕事などの事情で子どもを看ることが難しい保護者の方の利用が想定されます。夜に開いている保育園は少ないので、昨今の多様な働き方を考えても、需要が高い保育施設になると思います。
利用方法は、施設によって異なりますが、通常の保育園のように毎週決まった時間に登園するという形であったり、事前に登録をしておいて、必要なタイミングで利用するという場合もあります。料金形態なども施設によって異なるので、利用をされる方は、ご家庭の状況や生活スタイルなどに合わせて選ぶ必要があります。
ベビーホテルで保育士は働ける?
ベビーホテルではもちろん保育士の資格を持っている人が保育者として就業することが可能です。保育施設での就業経験があると、より有利に採用されるでしょう。
ベビーホテルで保育士以外の人は働ける?
ベビーホテルは冒頭でも書いたとおり「認可外保育施設」であるので、必ずしも保育士の資格を持っていることが必要になるわけではありません。しかしながら施設によっては保育士資格をもっていることや保育士としての就業経験が求められることがあります。保育業務に携わるので、少なくとも、「子育て支援員」などの研修資格などの保持が望ましいです。「子育て支援員」に関しては、既に研修を受講済みの方でなければ、ベビーホテルで働くことが決まってから、施設経由で研修を受けるというパターンもあります。
ベビーホテルでの仕事内容とは?
通常の認可保育園で保育士が働く場合とベビーホテルで働く場合の一番の違いは、夜間や早朝の時間帯の保育、宿泊を伴うという点です。
- 夜の寝かしつけ
- 沐浴・入浴の介助
など、通常の昼時間帯の保育園で働く場合にはあまり遭遇しないシチュエーションでの保育が求められます。通常の保育園では身につけることができないようなスキルが身につくということもあります。
それ以外の部分では、通常の保育園や保育施設で働く場合とそこまで違いはありませんが、行事などはあまり実施されない傾向があります。あくまでも、夜間などにどうしても子どもを預けなければいけない場合に一時的に利用ができる施設という意味合いが強いためです。そのため、登園頻度や時間帯なども様々なので、保護者を巻き込んだ行事などが定期的に開催されるというケースは少ないです。
また、宿泊を伴うということは、働く保育士についても夜勤が発生します。休憩時間に仮眠を取る場合もあります。労働時間もやや長時間になることが想定されます。
- 深夜勤務
- 仮眠休憩
ちなみに、ベビーホテルの食事に関しては、保護者の方が用意して子どもに持たせることが多いです。その場合、働く保育士も各自で食事を用意しなければいけませんね。
保育士がベビーホテルで働くメリットやデメリットは?
保育士がベビーホテルで働くメリットやデメリットについて紹介します。
時給が高い
保育士がベビーホテルで働くメリットの一つは、保育士がベビーホテルで働く場合、とりわけ、夜間や深夜の勤務をする場合は高い時給で働くことが出来るという点です。
それは、深夜や一日8時間を超える労働に関しては25%の割増の賃金が支払われるためです。その両方が重なれば、割増は1.5倍になります。これは、法律で規定されているので、どの施設で働く場合でも条件を満たせば適用されます。
ベビーホテル自体は、通常の認可保育園で働く場合と比較して給料が高いというわけではありませんが、深夜の勤務は体力に自身のある方にとっては悪くない時給になります。
逆に、深夜等の賃金が割増される時間帯以外を中心に仕事をする場合は、認可保育園と比べて、時給が高くはないケースも多いので、注意が必要な点になります。
通常の保育園で経験できない仕事内容がある
保育士がベビーホテルで働く場合のメリットの2つ目は、通常の保育園で経験できない仕事内容を経験することができるという点です。
24時間のベビーホテルで勤務する場合は、通常朝から夜までの保育園では経験できない様々な業務を経験することが出来ます。例として、夜の寝かしつけ、沐浴・入浴の介助などです。
これらの仕事は、今後、保育士やベビーシッターなどの業務を続ける上で、非常に価値のある仕事内容や経験になると思います。
長時間労働になる
保育士がベビーホテルで働く場合のデメリットは、勤務が長時間になってしまうという点です。ベビーホテルは開所している時間が長く24時間開いている場合もあります。
その状況で、各保育園は保育士不足と言われているなか、保育に従事する人を確保して、運営をしていることになります。保育園がきちんとした人員を雇用できていないと一人あたりの労働も長くなってしまう傾向があると思います。
また、良くない保育園に勤務してしまうと、サービス残業なども強いられてしまう可能性も出てくるので、うわべだけの待遇や謳い文句に騙されないということも大切です。
夜勤がある
これは時給が高いということの裏返しではありますが、ベビーホテルでの勤務は夜勤がある場合もあります。夜勤での勤務は昼夜逆転の生活になるので、リズムが乱れ健康などにも影響が出る場合があります。
よほど体力がある方でないと、夜勤の勤務を継続して続けるというのはなかなか難しいかもしれません。
保育士がベビーホテルの求人を探す際の注意点とは?
保育士がベビーホテルの求人を探す際の注意点について紹介します。
- 夜勤の手当
1つ目は、夜勤の手当についてです。
人を雇用する事業所はすべて、22時から翌5時までの勤務に関しては、法律で賃金を25%割増で支払う義務があります。仮に1000円の時給設定である場合は、22時から翌5時は最低でも1250円の時給を支払う必要があります。
事業所は、各都道府県ごとに設定されている最低時給に対して25%を割増で支払う必要があります。例えば、最低時給が1000円の都道府県で、22時から翌5時までの勤務に対して1200円の時給を設定している場合、最低時給を下回ってしまっていることになります。つまり、違法状態です。
もし、夜勤のあるベビーホテルの求人を探す場合は、この深夜部分の割増手当の支給についてきちんと確認しましょう。
- 残業手当
2つ目の注意点は、残業手当についてです。
これは、1つ目の夜勤手当とも関わります。保育園(会社)は通常、一日8時間を超える労働に対しては、時給換算で25%の割増の給料を支払う必要があります。仮に1000円の時給設定である場合は、8時間までは8000円、それ以降は1250円の時給を労働に対して支払う必要があります。
夜勤のあるベビーホテルでの勤務は労働時間が8時間超えるということも少なくないです。その場合はもちろん、超えた部分は割増の賃金を支払う必要があります。
さらに、前述した深夜の割増手当と重なると、50%割増
例として、時給1000円の雇用で19時から10時間勤務をしたとします。(実際は休憩が必ず入りますが、ややこしくなるのでここでは省きます。)
- 19時から22時までの3時間は時給1000円
- 22時から27時(翌3時)までの5時間は時給1250円
- 27時から29時(翌5時)までの2時間は時給1500円
という計算になります。
もし、夜勤のあるベビーホテルの求人を探す場合は、残業や深夜の割増部分の時給が正しく設定されているかどうかを確認しましょう。
- 夜勤の休憩(仮眠)について
最後にベビーホテルの求人で注意が必要なのは、夜勤の休憩(仮眠)の扱いについてです。
夜勤を伴うベビーホテルでの勤務では、仮眠を休憩が与えられる場合はあります。仮眠は法律上は必須ではないですが、ベビーホテルによっては、3時間程度の休憩を仮眠時間として付与していることがあります。
この仮眠時間中は時給が発生しないことがあります。 これは、ベビーホテルの雇用条件次第ですが、完全に労働から離れていて仮眠をしている場合は、時給を支払う必要はありません。
やっかいなのがこの仮眠が先ほどから計算している時給的には一番労働者にとって良い時間に与えられるという点です。深夜や残業が重なって時給が1.5倍になる時間帯です。
そして一番やっかいなのが、仮眠時間はあるけれど、実態は仮眠が取れず子どもから目を話すことができないという状態 の場合です。
認可保育園で働く保育士にもよくありますよね。休憩中なのに、書類仕事をしなければいけないなどです。それと同様に仮眠の休憩時間で給料は発生しないけれど、実際は仕事をしなくてはいけない状態です。
本来は、おそらくこれは違法なことでありますが、認可保育園でも休憩がろくに取れないということが起きていることを踏まえると、ベビーホテルでも同様の事象が起きることは容易に想定できます。
もし、夜勤のあるベビーホテルの求人を探す場合は、この仮眠の休憩時間の扱いとその実態を正確に把握しましょう。もし、完全に労働から離れていて仮眠できていないのに、時給も発生していないという状態の場合は、そこで働くのは避けたほうが良いでしょう。
保育士がベビーホテルで働く方法は?求人の探し方を紹介
ベビーホテルといっても求人の探し方は他の保育園とあまり大きくは変わりません。認可外保育施設なので、あまり調べても求人などが出てこないケースがあります。
そういった場合には、保育士の就職転職サイトの活用がおすすめです。たくさんの種類の保育施設の求人紹介も行っているので、ベビーホテルの求人も紹介してもらえる可能性が高いです。
特に好条件の夜勤の求人などを狙う場合は登録がおすすめです。稼げる人気の求人はすぐに無くなるので、登録しておいて募集があったら連絡してもらうというのも良いですね。
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まとめ:ベビーホテルの仕事内容、保育士が働く長所短所!求人は深夜残業手当や仮眠休憩に注意!
今回は、保育士も働くことができるベビーホテルの概要について紹介しました。ベビーホテルは、主に夜間等に乳幼児を預かる認可外保育施設のことを指します。
夜間の時給は割増になるため、体力に自信がある若手の保育士は、就業の検討の対象になる保育施設の1つといえます。
一方で、複雑な勤務形態や勤務時間などは、就業する前によく確認しておかないと、働き始めてからこんなはずじゃなかったということになってしまいます。
- 拘束時間だけ長くて、実は給料は全然もらえない
- 仮眠の時間なのに仕事をさせられる
- 保育者の人数が足らずに、いつも人手不足の中仕事に従事される
というようなことです。
もちろん、これらは、どんな種類の保育施設で働く場合でも、起こり得る問題かもしれません。また、これらに加えて、「人間関係」の良し悪しというのも働くうえではとても重要になります。
保育士が働くという場合は、ほかの保育施設で働く場合と、同様に、保育園の良し悪しブラック・ホワイトについて慎重な見極めが必要になると言えます。