保育士を目指している皆様。これから保育士資格を取得したいという方。国家戦略特別区域限定保育士という地域が限定された保育士の制度はご存知ですか。
この制度を活用すると、通常年2回の保育士試験の受験機会が3回以上に拡大するので、保育士を目指す方にはとてもお得な制度となっています。
ただし、名前の通り地域限定保育士は最初の3年間は地域限定保育士として合格した自治体でしか働くことができないなどの注意点もあるので、合わせて紹介していきます。
国家戦略特別区域限定保育士とは?
「地域限定保育士」はその名前の通り就業できる地域が限定された保育士の資格になります。平成27年度から創設されています。
地域限定保育士の試験は全国で行われる保育士試験とは別に実施されています。昨今の保育士不足の影響で、保育士の資格を取るチャンスを増やそうという狙いで創設されています。
以前は保育士試験は年1回春の試験でしたが、それが平成28年度に年2回の試験へと拡大されました。つまり現在は、春の保育士試験、秋の保育士試験、地域限定保育士の試験と最大年3回試験のチャンスがあります。
保育士不足の中で一部の地域で保育士試験の回数を増やすことで合格の機会を増やすために実施されています。通常年2回の受験機会が3回以上に拡大するので、保育士を目指す方にはメリットのある制度です。
ちなみに国家戦略特区とは、世界で一番ビジネスをしやすい環境を作ることを目的に、地域や分野を限定することで、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度になります。
特区として指定されている区域は平成31年3月現在時点で10区域になります。
- 東京圏
- 愛知県
- 新潟市
- 仙台市
- 仙北市
- 関西圏
- 養父市
- 広島県・今治市
- 福岡市・北九州市
- 沖縄県
つまり、これらの地域で地域限定保育士の試験が行われる可能性があるということになります。ただし、必ず実施されるというわけではなく、各年度によっても実施有無は異なります。
地域限定保育士の試験を受けたい場合は、必ず各自治体の最新の情報を確認してください。
普通の保育士資格との違いは?働く上での制限はある?
普通の保育士資格との違いは、最初の3年間は就業できる地域が制限されているという点です。最初の3年間は地域限定保育士として合格した自治体だけで働くことができます。
例えば、神奈川県の地域限定保育士の試験に合格した場合は、最初の三年間は神奈川県内での就業のみ認められます。
ちなみに「登録後3年間」なので登録して3年間経過すれば全国で働くことができる保育士となります。登録してから3年なので、必ずしも3年間保育士として就業する必要はありません。
つまり、神奈川県の地域限定保育士の試験に合格し保育士登録を済ませ、三年間どこの保育園でも働かなかった場合でも、翌年からは日本全国で就業することができます。
登録というのは保育士登録のことで後述しています。保育士登録が必要なので、試験に合格しただけで登録をしないと3年間がカウントされないので注意してください。4年目以降は通常の保育士となんらかわらない資格となります。
最初の三年間は働ける地域を限定しているのは、資格の種類の問題ではなく、単純に試験を実施している自治体にメリットがあるようにするためだと思います。
保育士試験を実施するのにも自治体に多額の費用ががかるので、制限がないと県内で働く保育士を増やしたくてもすぐに別の都道府県で働き出すということが起きてしまうためです。
試験内容は?
試験内容については、通常の保育士試験と同様の出題範囲と難易度になっています。ただし、実施の自治体によっては実技試験の代わりに保育実技講習などを実施する場合もあるようです。
- 保育原理
- 教育原理及び社会的養護
- 児童家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
保育士試験の筆記試験は8科目ですが、1回の試験ですべての科目に合格する必要はありません。合格した科目は3年間有効なので、その間に他の科目に合格すればよいです。
通常の保育士試験で合格している科目は、地域限定保育士の試験でも免除されます。その逆も同様で、地域限定保育士の試験で合格している科目は、通常の保育士試験でも免除となります。
ただし、地域限定保育士がすべての科目で合格済の場合は、通常の保育士試験は初受験の扱いとなり、すべての科目に合格する必要があります。
いずれにしても、筆記試験に関しての出題範囲は全国試験と同様なので、特に異なる試験対策は必要ありません。
出題内容や難易度も考えると、やはり、単純に試験の受験機会が増えるという認識で問題ないです。また、後述していますが、実施している自治体によっては実技試験が保育実技講習会のような研修になっている場合があります。
この場合は、研修を受ければ自動的に実技試験が合格したことになります。
地域限定保育士の試験が行われているエリアは?
地域限定保育士の試験は以下の地域で行われた実績があります。
- 平成27年:千葉県、神奈川県、大阪府、沖縄県
- 平成28年:大阪府、仙台市
- 平成29年:神奈川県(独自実施)、大阪府
- 平成30年:神奈川県(独自実施)、大阪府
- 平成31年:神奈川県(独自実施)
- 令和2年:神奈川県(独自実施)
- 令和3年:神奈川県(独自実施)
毎年確実に実施されるというわけではないので注意が必要です。地域限定保育士の試験を受けたい場合は、必ず各自治体の最新の情報を確認してください。
例えば、令和3年神奈川県独自地域限定保育士試験は以下のようなスケジュールで実施される予定です。
- 筆記試験
- 日程:令和2年8月15日(土曜日)、16日(日曜日)
- 会場:青山学院大学 相模原キャンパス(相模原市中央区淵野辺5-10-1)
- 保育実技講習会
- 令和2年10月から11月
試験手数料は12,700円となります。
平成31年神奈川県独自地域限定保育士試験は以下のようなスケジュールで実施されています。
- 筆記試験:平成31年8月10日(土曜日)、11日(日曜日)
- 保育実技講習会:平成31年10月から11月(この間、5日間程度)
受験申請期間は、平成31年4月12日(金曜日)から5月10日(金曜日)となっているので既に締め切られています。
試験手数料は12,700円となります。
試験会場は「鎌倉女子大学 大船キャンパス」と「日本女子大学 西生田キャンパス」が指定されており、選ぶことはできないようです。
保育実技講習会は、保育士試験の実技試験の代わりに行われている試験です。
講習内容・講習時間については、音楽表現に関する演習(90分×4コマ)、造形表現に関する演習(90分×4コマ)、言語表現に関する演習(90分×4コマ)、保育実践見学実習の事前指導(60分)、保育実践見学実習(1日)、保育実践見学実習の事後指導(120分)の合計27時間(約5日程度)となっています。
就業している方向けに平日コース、休日コース等の複数のコースが実施される予定になっています。
保育実技講習会は、基本的に講習に参加すれば合格となるので、通常の保育士試験の実技試験より難易度は低いということになります。その分拘束時間は結構長いので注意が必要です。
※ 参考「神奈川県 保育士試験のご案内」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/sy8/hoikushishiken_an-nai.html
取得後の就業には保育士登録が必要
地域限定保育士の試験に合格したあとに保育士として就業するには保育士登録が必要です。通常の保育士試験に合格した場合と同様の手順です。
登録後に保育士証を受け取ることができます。登録には約2ヶ月程度要するため早く働きたいという方は事前に準備しておくことをおすすめします。
先にも説明したとおり、この保育士登録の後の3年間は就業地域が制限されるので、働くつもりがなくても登録しておくことをおすすめします。
地域限定保育士のよくある質問
地域限定保育士のよくある質問を紹介します。
地域限定保育士の試験は毎年実施される?
地域限定保育士の試験が行われるかどうかは各年度ごとによって異なります。
例えば、大阪府では毎年行われていますが、沖縄県では平成27年度に実施されて以来行われていません。保育士試験自体が現在は年2回の開催になっているので、地域限定保育士の試験の実施は縮小傾向にあるようです。
今後も同じ地域で実施されるとは限らないという点に注意が必要です。
他の都道府県に在住していても受験できる?
他の都道府県に在住していても受験することが可能です。近隣県の方も試験合格のチャンスを増やすことができます。ただし、地域限定保育士の実技試験(保育実技講習会)に合格すると3年間はその自治体でしか就業することができなくなくなってしまいます。
この場合は、地域限定保育士試験の筆記試験はすべての科目を合格し、実技試験は受験せずに来年の通常の保育士試験で実技試験を受験することで全国で働ける保育士資格を取得することが可能です。
ただし、筆記試験合格科目には免除有効期限があるので、その点には注意が必要です。
まとめ
地域限定保育士は、最初の3年間は地域限定保育士として合格した自治体のみでしか働けないということ以外は通常の保育士の資格と同様です。単純に試験の受験機会が増えるという捉え方で問題ないです。
もちろん、遠方から受験する場合は、地域限定保育士に合格してしまうと3年間はその都道府県でしか就業できないので、注意してください。その他のエリアで働く場合には、通常の保育士試験に再度合格する必要があります。
また、保育士試験の実技試験が苦手な方は、実技試験のかわりに保育実技講習会を実施しているところが多いので合格の可能性も高くなります。
今後も地域限定保育士の試験が行われるかどうかはわかりませんが、地域限定保育士の試験は、通常年2回の受験機会が3回以上に拡大するので、保育士を目指す方にはお得な制度です。