保育園で働く保育士の皆様。
今回は、こども誰でも通園制度はどのような制度なのか、そして、働く保育士のどのような影響があるのかという点を考えてみました。
こども誰でも通園制度については、「こども未来戦略方針」案 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai5/siryou1.pdf を参考に情報を得ています。
その経験が参考になればと思います
こども誰でも通園制度とは?
こども誰でも通園制度は、全ての子育て家庭を対象とした保育の拡充を行う新たな制度で、2023年6月1日に「こども誰でも通園制度」を創設することを政府が表明しました。
0~2歳児の約6割を占める未就園児を含め、子育て家庭の多くが「孤立した育児」の中で不安や悩みを抱えており、支援の強化を求める意見がある。全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に対して、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化するため、現行の幼児教育・保育給付に加え、月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付(「こども誰でも通園制度(仮称)」)を創設する。
※引用「こども未来戦略方針」案 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai5/siryou1.pdf
詳細はまだ決まっていない
こども誰でも通園制度は、2024年度以降に開始される予定で、現時点(2023年6月17日)では、まだ詳細は決まっていません。
具体的な制度設計に当たっては、基盤整備を進めつつ、地域における提供体制の状況も見極めながら、速やかに全国的な制度とすべく、本年度中に未就園児のモデル事業を更に拡充させ、2024 年度からは制度の本格実施を見据えた形で実施する。あわせて、病児保育の安定的な運営に資するよう、事業の充実を図る。
※引用「こども未来戦略方針」案 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai5/siryou1.pdf
現在も「一時保育」という制度があり、保育園に通う園児ではなくてもほとんど理由を問わずに一時的に子どもを預かる制度は存在します。もちろん、すべての保育園が実施しているわけではなく、利用するにも、事前の予約が必要であったり、料金もかかります。こども誰でも通園制度は現在の「一時保育」とは異なる制度になるでしょう。
そもそも、すべての認可保育園で導入される制度なのか、保育園の定員に空きがないと使えないのか、希望する保育園を利用できるのか、ということも、これから徐々に決定されていくと見られています。最初にも書きましたが、2024 年度からは制度の本格実施を見据えているので、2023年度中には制度の概要が明らかになってくると見られます。
仮に、定員に空きがないのに、こども誰でも通園制度が使えるということになると、利用者のタイミングによっては、一時的に預かる子どもの人数が増えすぎてしまって、安全性が担保できなくなってしまう可能性があります。
逆に、定員に空きがないと利用できないということになれば、毎年、定員が満たされているような保育園では、実質的にこども誰でも通園制度が使えないということにもなるかもしれません。つまり、そもそも待機児童が発生しているような地域では、こども誰でも通園制度は利用できないということになります。
なぜこども誰でも通園制度ができる?背景は?
なぜこども誰でも通園制度ができるのでしょうか。
こども誰でも通園制度の創設については「「こども未来戦略方針」案 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai5/siryou1.pdf」において、
0~2歳児の約6割を占める未就園児を含め、子育て家庭の多くが「孤立した育児」の中で不安や悩みを抱えており、支援の強化を求める意見がある。全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に対して、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化するため
とされています。
また、こども誰でも通園制度は、日本の少子化対策の一つでもあります。政府としては、より子育てがしやすい社会を作り、少子化の対策につなげようという狙いがあると思います。
こども誰でも通園制度は働く保育士のどのような影響がある?
こども誰でも通園制度が始まるということに関して、保育園で働く保育士の方が気になるのは、自分たちにどのような影響があるのかということだと思います。その点について考えてみました。ただし、前項で書いた通り、こども誰でも通園制度の詳細はまだ決まっていないので、現時点(2023年6月17日)でわかる情報や推測なども踏まえて考えています。
保育需要がより増える
「こども未来戦略方針」案 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai5/siryou1.pdf」において、
0~2歳児の約6割を占める未就園児
と記載されています。つまり、0〜2歳の全体の約6割が保育園に通っていないということになります。もちろん、この全員がこども誰でも通園制度を利用を希望するとは限りませんが、最大で現在保育園に通っている0~2歳児の総数が2倍程度増える可能性があるということになります。
利用時間に上限が設けられるとはいっても、その分、保育園の需要が増えることになります。特に、0〜2歳児はまだまだ、待機児童が多い自治体もあるので、その点との兼ね合いも難しいです。
保育士不足が加速する
こども誰でも通園制度の利用が、月一定時間までとはいっても保育園に通園する園児の人数が増えるということは、その分、保育士の人数も多く必要になります。
保育士が足りないから受け入れられるはずの定員を減らしているという保育園も少なくないので、逆に、保育士が足りないから「こども誰でも通園制度」は導入できないという保育園も出てくるかもしれません。
保育士の仕事の負担が増加する
単純に保育園に通う園児の総数が増えるということは、保育士の仕事の負担が増加する可能性があるということになります。たしかに、保育士には配置基準があり、それをきちんと守るのであれば、園児の人数が増えれば、働く保育士の人数も一定の割合で増えるはずです。ただし、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できるという「こども誰でも通園制度」の趣旨を考えると、保育園の保育士の勤務シフトもそれにあわせて柔軟に対応できるという保育園は多くはないかもしれません。
そうなると、一時的に、保育士が基準に対して不足してしまう時間帯ができる可能性があります。そうなると、保育士の仕事の負担が増加することになってしまうでしょう。
逆に、保育士の配置基準をきちんと守ろうとすると、「その日は利用できない」「別の日にしてほしい」「他の人が既に予約している」というような理由で利用ができなくなり、柔軟に利用できるという趣旨に反してしまうことになります。これだと、現在の「一時保育」とあまり変わらない内容になってしまいます。
また、ほぼ毎日保育園に通う園児に対する保育と、たまにしか保育園に通わない園児の保育では、保育の内容も変わってくるということも想定できます。こども誰でも通園制度を利用する園児向けのカリキュラムや指導案などは、通常の園児とは別に用意する必要なども出てくるでしょう。
幼稚園の需要がより低下する?
こども誰でも通園制度の利用の条件によっては、幼稚園ではなく「こども誰でも通園制度」のみを利用しようと考える保護者の方が出てくる可能性もあります。保育園は開園時間が長いので、そちらのほうが都合が良いという人も出てくる可能性があります。そうなると、幼稚園の需要がより低下する可能性もあります。
認可外保育施設の需要がより低下する?
こども誰でも通園制度の利用の条件によっては、例えば、月一定時間は「こども誰でも通園制度」を利用して、足りない部分は「認可外保育施設」を利用するというような使い分けをする利用者の方が出てくるかもしれません。そうなると、認可外保育施設の需要が今より低下する可能性があります。
もしそうなった場合、認可外保育施設で働く保育士の方は、閉鎖等のリスクが生まれてくることになります。
今から保育士や保育園ができること
保育園で働く保育士としては、こども誰でも通園制度ができることで、保育士や保育園にばかり負担のしわ寄せが来るのではなく、恩恵やメリットを受けられるようにしたいですよね。そのために、制度の詳細が決まっていない今から保育士や保育園ができることについて紹介します。
- 声を上げる
- 政治に参加する
現在でも、まずは、保育士不足の解消、及び、保育士の待遇改善、負担軽減が先だという声がよく上がっています。一人ひとりがそのような意見を挙げたり、選挙の投票等に参加して意志を表明することで、保育園で働く保育士にとってもメリットがある制度にしていくということにつながるかもしれません。
まとめ:こども誰でも通園制度は働く保育士のどのような影響がある?
今回は、こども誰でも通園制度はどのような制度なのか、そして、働く保育士のどのような影響があるのかという点を考えてみました。
こども誰でも通園制度は、2024年度以降に開始される予定で、現時点(2023年6月17日)では、まだ詳細は決まっていませんが、
月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず時間単位等で保育園を柔軟に利用できる制度
という内容が基本になります。現行の一時保育をより利用しやすくしたような形と言えるかもしれません。
現時点(2023年6月17日)でわかる情報から考えると、こども誰でも通園制度が始まると、保育士にも以下のような影響や関連する変化が出てくるかもしれません。
- 保育需要がより増える
- 保育士不足が加速する
- 保育士の仕事の負担が増加する
- 幼稚園の需要がより低下する?
- 認可外保育施設の需要がより低下する?
現在でも、まずは、保育士不足の解消、及び、保育士の待遇改善、負担軽減が先だという声がよく上がっています。一人ひとりがそのような意見を挙げたり、選挙の投票等に参加して意志を表明することで、保育園で働く保育士にとってもメリットがある制度にしていくということにつながるかもしれません。