保育園で働く保育士の皆様。これから保育園で働きたいと思っている方。
地域型保育事業は、平成27年度から新しくはじまった保育施設の認可事業になります。これから保育園で働きたいと思っている方は、通常の認可保育園とこの地域型保育事業の違いなどをきちんと理解しておくことが、働く保育施設選びにおいて大切です。
今回は、地域型保育事業について、保育士が働く上で知っておくべきことなどを解説します。
その経験が参考になればと思います
地域型保育事業とは?
地域型保育事業は、平成27年度に開始した「子ども・子育て支援新制度」によって認められてた新たな保育施設の形態になります。昨今は、特の都市部において、0〜2歳児の保育需要が高くなっていて、待機児童が発生しています。そのような需要を満たすために新しく、小規模保育事業、家庭的保育事業、事業所内保育事業、居宅訪問型保育事業の四種類の保育施設の認可が認められました。この制度によって各市区町村では、続々と新たな地域型保育事業が誕生しています。
保育施設としては、認可の保育園ではありますが、これまでの認可保育園とは、少しルールや仕組みが異なる場合があります。
なぜ地域型保育事業が生まれた?
地域型保育事業は、認可保育園や認定こども園等ではまかないきれない保育需要を満たして、待機需要を解消することを目的としています。
認可保育園の定員は20名以上で、50名以上の定員の施設が多くなっています。必然的に、一つの保育園を開くためには、それらにの土地や建物、保育士などの確保が必要になります。一方で、保育需要は特に都市部では細分化されていて、市区内に認可保育園を適当に設置すれば良いというわけではありません。それでは、細かい保育需要を満たすことが難しくなっています。
例えば、自治体内のある地域で0歳児クラスの待機児童が多く発生しているけれど、5歳児クラスは定員に余裕があるという場合があります。この場合は、普通の0歳児〜5歳児クラスのある認可保育園を新たに作ってしまうと、土地や建物、そこで働く保育士を含めた職員等が無駄に多く必要になってしまうことになります。
そういった中で、小さい規模で特に保育需要が高い0〜2歳児の保育を行う施設として地域性を踏まえて市町村による認可により新たな保育施設を作れるようにしたという背景があります。
地域型保育事業の種類
地域型保育事業には以下の4つの種類があります。
- 小規模保育事業
- 家庭的保育事業
- 事業所内保育事業
- 居宅訪問型保育事業
それぞれの保育事業の詳細については個別に解説しているのでそちらを参照してください。
小規模保育事業
小規模保育事業は、認可保育園の小規模版という形で定員6〜19名で0〜2歳児の保育を行います。小規模保育事業はさらにA型、B型、C型の3つの種類があり、職員数と職員の資格保有割合と保育室の面積に違いがあります。
- 事業主体:市町村、民間事業者等
- 保育実施場所等:保育者の居宅、その他の場所、施設
- 認可定員:6~19人
家庭的保育事業
家庭的保育事業は、家庭のような保育を行う保育施設で、小規模保育事業よりさらに定員が少なく1〜5名の定員で0〜2歳児の保育を行います。保育者の居宅での保育になるという特徴があります。
- 事業主体:市町村、民間事業者等
- 保育実施場所等:保育者の居宅、その他の場所、施設
- 認可定員:1~5人
事業所内保育事業
事業所内保育事業は、企業が運営する保育施設で、設置元の企業の従業員の子どもの利用枠と地域の保育を必要とする子どもの地域枠が設けられています。設置する企業にとっては従業員の福利厚生としても価値もあります。
- 事業主体:事業主等
- 保育実施場所等:事業所の従業員の子ども+地域の保育を必要とする子ども(地域枠)
居宅訪問型保育事業
居宅訪問型保育事業は、保育を必要とする子どもの居宅で保育を行うという特徴があります。子どもひとりに対して保育者ひとりで保育を行う、ベビーシッターのような事業になります。
- 事業主体:市町村、民間事業者等
- 保育実施場所等:保育を必要とする子どもの居宅
普通の認可保育園との違いは?
保育士の方も保育施設の利用を検討している方にとっても気になるのは、普通の認可保育園との違いだと思います。
大きな違いは、やはり保育定員になります。地域型保育事業は、基本的に19名以下の定員の保育園が多いです。そのため、認可保育園と比べると、小規模でひとりひとりに寄り添った形の保育施設が多いです。また、認可保育園は都道府県が認可を行いますが、地域型保育事業は市町村が認可を行うという違いもあります。
働く保育士にとっての違いは?
働く保育士にとっては、一つの保育施設の規模が小さく従業員の数も少なくなります。そのため、人間関係も落ち着いていて、子どもの人数も少ないので、落ち着いた保育ができる場合が多いです。人数も少ないため、行事なども比較的、小規模に行われることが多く、保育士の負担も少ない傾向があります。園児は0〜2歳児が中心なので、特に乳幼児保育の経験や知識が求められます。
また、一部の地域型保育事業は、職員の資格保有者の割合が1/2以上で良いという施設があるので、職員の保育士資格の保有者の割合が少ない場合もあります。
利用者にとっての違いは?
利用申込みは、通常の認可保育園と同様で、市区町村への利用申込みと利用調整によって利用が決定します。保育料なども通常の認可保育園と同等の基準により計算され決定します。その点では大きな違いはありません。ただし、地域型保育事業は、主に0〜2歳の保育施設になるため、3歳児以降になったらどうするかという問題が発生します。地域型保育事業には、連携施設として認可保育園や認定こども園が設けられます。地域型保育事業から卒園した場合は、連携している保育施設にそのまま入ることが可能です。
結局、地域型保育事業は良いの?悪いの?
現在では、自治体内で必要とされる保育定員を、効率よく、素早く満たすというために、地域型保育事業はなくてはならない存在であると言えます。
通常の認可保育園を新たに開設しようとすると、土地・建物など様々なハードルを満たさなくてはいけないです。そして、現在、日本において、待機児童が多く発生しているのは、やはり0〜2歳の乳児においてです。新たに認可保育園を開設しようとすると、乳児の定員は満たされても、幼児の定員が満たしにくいというようなことも起きてしまいます。
その点で、地域型保育事業はそれぞれの地域の事情などに合わせて、柔軟に保育施設を運営できるという点で、待機児童を減らす、及び、保育需要を満たすということにおいて、非常にメリットがあるシステムではあります。
利用者にとって良いの?悪いの?
一方で、地域型保育事業の利用者にとってのデメリットの一つは、3歳児クラスに進級した際に、別の保育施設に入園しなくてはいけないという点です。これは、子ども本人にとっても大きな変化で、慣れている環境から新しい環境に変わらなくてはいけません。また、連携施設は地域の状況によって決定されているため、自分で選ぶことができないというデメリットもあります。故に、あらたに小規模保育事業に入園するという際は、連携先の施設についてもきちんと把握して、下調べをしておく必要があります。連携先はどのような保育園なのか、通勤通学が可能な位置なのかという点です。
場合によっては、0歳児クラスで小規模保育事業に入園した場合に指定されていた連携施設が、3歳児クラスに進級するまでに、変更になる可能性もないとは言えません。
また、地域型保育事業の仕組み自体が平成27年度に開始した「子ども・子育て支援新制度」によってできたものなので、大半の施設がここ10年以内に新しくできた施設ということになるため、保育園としての成熟度はまだまだという施設が多いという点も留意が必要になるでしょう。
働く保育士にとって良いの?悪いの?
働く保育士にとっては、地域型保育事業で働くということは、先程も書いたように、人間関係も落ち着いていて、子どもの人数も少ないので、落ち着いた保育ができる場合が多いというメリットがあります。ですが、それはあくまでも、地域型保育事業全般の傾向として言えることであり、必ずしも、各施設でそのような環境が保証されているというわけではありません。やはり、他の保育施設と同様に、きちんと待遇面や労働環境の良し悪しを見抜いた上で就業するということが大切になります。
一番良くないのは、今の大規模な認可保育園での仕事が大変だから、なんとなく楽そうな小規模な保育園に転職するということです。地域型保育事業で働けば必ずしも保育士の負担が少なく楽になるというわではないので、それだけを基準に転職活動をするというのはリスクが大きいでしょう。
まとめ:地域型保育事業とは?保育士が働く上で知っておくべき保育施設を解説!
今回は、保育士が働く上で知っておくべき保育施設の種類の一つである、地域型保育事業について紹介しました。
地域型保育事業は、平成27年度に開始した「子ども・子育て支援新制度」によって認められてた新たな保育施設の形態になります。各市区町村は、この地域型保育事業で細かい保育需要を満たしています。
地域型保育事業には、以下の4つの種類があります。
- 小規模保育事業
- 家庭的保育事業
- 事業所内保育事業
- 居宅訪問型保育事業
共通する特徴としては、通常の認可保育園と比べて定員が少ないというところと、園児は0〜2歳児が中心ということです。施設としては、人間関係も落ち着いていて、子どもの人数も少ないので、落ち着いた保育ができる場合が多いです。