転職を考えている保育士の皆様。保育士の求人でたまに見かける固定残業代制ってどんなものかご存知ですか?
今回は、このような疑問がある方向けに保育士の求人でたまに見かける固定残業代制について解説します。固定残業代制は、正しく運用されていれば、そのものは悪でも善でもない多くある働き方の一つになります。ただし、固定残業制はブラック企業が悪用している例もあるため注意が必要です。
そもそも固定残業代制(みなし残業制)とは?
固定残業代制とは、一定時間分の残業代があらからじめ給料に組み込まれた賃金体系のことを言います。みなし残業制とも言われます。
例えば、
基本給15万円 + 20時間分の残業代5万円 = 20万円
を基本給とするという制度です。
上記の例だと、もし月の残業時間が20時間を超えた場合はその分の残業代はしっかりと払わなければいけません。逆に残業時間が20時間に満たなかった場合であっても、残業代として5万円が支給されます。
しかしながらブラック保育園では、残業代は払われているとして、20時間を越えた部分の残業代を支払わらない悪質なケースがあります。固定残業代制かどうかに限らず、そもそもの残業代すら払わないブラック保育園も存在しますが。
固定残業代制は、法律で定められていることではなく会社が独自に定めている制度なので、会社は残業をした時間分はかならず残業代を支払う必要があります。
固定残業代については残業代の計算および支払いが不要という、定額働かせ放題の制度として利用するというのは法律上認められないので注意が必要です。
また、基本給の金額、残業代の金額はそれぞれ、都道府県ごとに設定された最低賃金を下回ってはいけないことになっています。
例えば、上記の例の場合は、基本給の15万円の部分で最低賃金を上回っている必要があります。合計された20万円で最低賃金を上回っていても、基本給の15万円の部分で最低賃金を下回っていたら法律違反になります。
20時間分の残業代5万円に関しても、最低賃金 ✕ 超過勤務手当1.25 を上回っている必要があります。超過勤務である残業時間に関しては、通常の時給の1.25倍の金額を労働者に支払う必要があります。
固定残業代制(みなし残業制)を導入する保育園側のメリットは?
固定残業代制(みなし残業制)を導入する 保育園側 のメリットを紹介します。
基本給を高く見せることができる
保育園が求人を掲載する場合に基本給を高く見せることができます。
- A保育園 基本給15万円
- B保育園 基本給20万円(20時間分の残業代5万円を含む)
というように基本給を高く見せることができます。正確には基本給の金額は同じ求人になりますが、ぱっと求人を比較しただけだと、固定残業代が含まれているほうが給料は高く見えるようになっています。あまり、よく考えずに求人に応募してしまうとこのような求人だったということがあります。
悪質な場合だと「20時間分の残業代5万円を含む」という記載が求人に書かれていない場合もあります。
時間外労働を抑制できる
月の給料に残業代が含まれているので、保育士の時間外労働を抑制することができます。
20時間分の残業を固定残業制としている場合、残業を1分もしなくても、20時間したとしても保育園が保育士に払う賃金は同一です。固定残業制を正しく運用している場合はこのような仕組みになります。
そのため、保育士は無駄にだらだら働くよりもテキパキ仕事を終わらせて帰ろうとします。結果的に時間外労働が減るので、生産性が高まります。
働く側の気持ちとしても、残業を1分もしなくても、20時間したとしても月に貰える金額が一緒であれば、早く終わらせて早く帰ろうという気持ちになりますよね。
保育園(会社)の予算が把握しやすい
会社側のメリットとしては、年度ごとの人件費の概算が把握しやすいということも挙げられます。
会社としては、残業代が含まれた状態で人件費が計算できるため、人件費の計算が割と容易になります。会社の資金繰りなどを安定させることができます。
保育士が固定残業代制(みなし残業制)の保育園で働くメリットは?
基本的には働く保育士にとってはほとんどメリットがありません。
強いて言えば、先に示した通り、残業代が基本給に含まれているので仮に残業をしなければ固定の残業時間分の賃金は支払われます。てきぱき仕事を終わらせて早く帰れば、短い労働時間で多くの賃金を貰うことができます。
しかしながら実際の現場を想像してみてもらえばわかると思いますが、仮にあなたが仕事のできる保育士で、毎日定時で帰ることができたとします。他の保育士は残業をしているなか毎日定時で帰るという行動はなかなか難しいと思います。
場合によっては、他の人がやるはずだった仕事が回ってきたり、気にせず定時で帰ったら人間関係に問題が生じそうです。
もし、保育士全員がきっちり時間内に仕事を終わらせることができるなら、そもそも保育園は固定残業代制(みなし残業制)を導入しないような気がします。
保育園としても、多くの保育士の残業が少なくなったら、固定残業代を支払う分必要な人件費が増えてしまいます。よって、普通に考えたら、固定残業の時間部分は残業があると考えられます。金銭的に余裕がある保育園は少ないので、保育士が誰も残業していないのに、固定の残業代を支払う保育園は稀有でしょう。
なので保育士が固定残業代制(みなし残業制)の保育園で働くメリットはあまりないかもしれません。
固定残業代制(みなし残業制)の保育園の求人の注意点
保育士が固定残業代制(みなし残業制)の保育園で働くメリットはあまりないと書きましたが、固定残業代制を導入しているからといって頭ごなしにブラック保育園とみなして選択肢から外してしますのは少しもったいないかもしれません。
固定残業代制(みなし残業制)の保育園の求人を見る際の注意点を紹介します。
固定残業代制について説明がない場合はアウト
- 固定残業代制を導入しているのに、求人に固定残業代のことが書かれていない
- 固定残業代の金額を基本給としっかりわけて、何時間分の残業代に相当するのか説明されていない
上記の場合は、ブラック保育園の求人である可能性が高いので避けるべきです。固定残業代を払っているから何時間残業をさせても良いと思っているかもしれません。
面接などでもきちんと説明がされない場合は騙そうとしている可能性が高いので注意が必要です。
固定残業代を除いた基本給が最低賃金を下回っていたらアウト
固定残業代はあくまでも、残業代です。法律上はこれを除いた基本給が最低賃金を上回っている必要があります。
最低賃金以上かどうかを調べるには「月給÷1箇月平均所定労働時間」の計算をする必要があります。そのためには前項で説明した通り、何時間分の残業代としていくらが固定残業として含まれているかを知る必要があります。
月の所定労働時間を一日8時間✕20日として160時間とすると、
160 ✕ 1013円(令和元年度の東京都の最低賃金) = 162080円
が東京都の最低賃金ということになります。※最低賃金は都道府県によって異なります。
固定残業代を除いた基本給がこの最低賃金を下回っていたらその時点でアウトになります。
月の所定労働時間は保育園を運営している法人によって異なるところになりますが、この数値に近いということは最低賃金レベルの給与という事がわかると思います。
賞与の計算方法に注意
賞与の支給方法は会社独自に設定することができます。例えば、
- 固定残業代を含んだ基本給の○ヶ月分
- 固定残業代を除いた基本給の○ヶ月分
どちらかによって、賞与の金額が全然違ってきます。固定残業代が給与に含まれていると基本給が高く見え、それに伴いボーナスも多いように錯覚してしまいますが、後者の場合はボーナスがかなり少なくなります。
このようにボーナスが多いようにみせる悪質は保育園もあるので注意が必要です。
【就業中の方向け】固定残業代制の(法律的に)正しい運用のチェックリスト
もし違反していたら、ブラック保育園かもしれません。しっかりと証拠を残して労基に相談するか、転職を検討したほうが良いかもしれません。
- 固定残業代がいくらで、何時間分の残業代に相当するのかを明示している
- タイムカードなどでしっかり労働時間が管理されている
- 固定残業時間分をオーバーした部分について残業代が支給されている
- 固定残業時間を抜いた基本給が最低賃金を下回っていない
- 固定残業代が最低賃金を下回っていない
- 休日出勤や深夜残業の計算が正しくされている ※
※ 6に関しては、通常休日出勤や深夜労働などの組み合わせによっては25%-60%の割増賃金を支払う必要があります。
ブラック保育園からの転職は保育士の転職エージェントがおすすめ
私も面接に行ってから「ここはブラック保育園かも」って思ったことが何度かあります。そういう場合は、履歴書も時間も無駄にした気持ちになります。
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