新年度は何かと忙しい時期。新しいクラスに馴染めるか、どんな保護者や子どもたちがいるのか。不安と期待が入り混じり、保育士にとってはとても大変な時期です。
そんな中で行われるのが新年度初めての懇談会。懇談会は保育士と保護者がゆっくりと話せる貴重な時間になります。最初の印象が特に大切!
保育士と保護者が互いに満足でき、失敗しない懇談会にするにはどうしたらよいか。ここでは新年度の懇談会に着目し、具体的な進め方やポイントを解説していきます。
懇談会の実施経験があります
その経験が参考になればと思います
懇談会とは?何をするのか?
新年度の懇談会は保育士が緊張する行事の1つです。園によって具体的に話すことや流れはある程度決まっているところがほとんどです。ここでは懇談会の大切さと具体的にどんなことをするのか。大きく5つに分けて解説していきます。
懇談会の目的
新しいクラスになり、これから1年を共に過ごす子どもたちや保護者。保育園は保護者との関わりがとても密になります。
保護者は、新しい先生になることで期待や不安が大きいこの時期。また、私たち保育士もどんな保護者がいるのかドキドキしています。
新年度の懇談会は保育士にとっても、保護者にとっても初めてじっくりと話せるとても貴重な時間になります。
また、クラスの保護者が全員揃うことで、自分の子だけではなく同じ年の子の保護者の話を聞くことで客観的な見方で子どもの姿を捉えることができます。
そして保育士は、この場で1年の目標や方針を話すことで保護者からの信頼やクラスの団結力を強めるきっかけにもなります。
時間はどのくらい?
保育園の懇談会は園によって開催する曜日や時間は様々です。また、内容によって時間も変わってきます。
基本的には平日に働いている保護者が多いので、土曜日などに行われることが多く、時間は全て含め午前中で2〜3時間程度で終わることが多いです。
主な流れとしては、はじめに全クラスの保護者が集まり、園長先生の話を聞いてから各クラスに移動しクラスで懇談会がはじまる。という流れが多いです。
保育士の服装
懇談会の際の保育士の服装は、エプロンをつけた普段の保育をしている時の服が一般的です。
園によっては、園指定の制服やポロシャツ等があり統一するところもありますが、改めて準備するということはほとんどありません。
だからといって使い古した膝に穴があいているようなズボンを履くのは印象がよくないので避けましょう。
懇談会中の子どもたちは?
懇談会の日は基本的に土曜日が多く、父母のどちらかに参加してもらうため子どもたちは基本的に家庭での保育をお願いしています。懇談会は大人だけで話せる唯一の機会のためできるだけ子どもの参加は遠慮してもらっていて、この日だけは祖父母にお願いする方もいるようですが、止むおえず連れてこなければならない方もいます。
保育士の役割
懇談会における保育士の役割は、一方的に会を進める。ということだけではありません。会の進行はもちろんですが、保護者同士がコミュニケーションをとれるように話題を提供して話をしてもらったり、話ができていない保護者の方に話を振ってみたりして保護者同士で話せる環境を作っていくのも大切なことになります。
そして最後は1年を無事に終えられるようしっかりと挨拶をし会を締めましょう。
懇談会の主な内容と進め方
実際に新年度の懇談会をどのように進めていけば良いのか。主な流れを具体例を交えながら詳しく解説していきます。会を楽しめる出し物等もぜひ参考にしてみて下さい。
自己紹介
各クラスにわかれ、会がはじまったらまずは担任の自己紹介を行います。自己紹介については以下で詳しくポイントを解説します。
クラスの様子
新年度の懇談会はクラスが少し落ち着いた5月頃に行われるところが多いです。そのため、ここで進級してからの1ヶ月の様子を伝え保護者の方にもどんな姿があったのか想像してもらいます。ここでは個人のことよりもクラスとしての遊び方、保育者との関わり、部屋が変わってからの様子などを話すことが大切になります。
「クラスの雰囲気がよく、進級を喜び、戸外では早速みんなで氷おになどルールのある遊びを楽しめています。」
「環境が変わって不安があり1人が泣くとみんな泣き出してしまうこともありますが、ピアノでみんなが好きなちょうちょの歌を弾きだすと涙がとまり手や体を動かす姿が見られます。」
等何か具体的なエピソードがあると尚いいです。
1年の保育目標とどんなクラスにしていきたいか、育って欲しい子どもの姿
ここで具体的に、年間カリキュラム等で立てた1年の保育目標を伝えます。保育士は子どもを育てるプロです。各年齢の発達段階はしっかりと理解しここでしっかり保護者に伝えることで、保護者の方からの信頼を得られる機会にもなります。
しかし子どもを育てるのがはじめて。という保護者の方もいるので難しい用語等を使いすぎず、話し方を工夫しながら伝えていくことが大切になります。
また、2歳児では3歳児に向けてトイレトレーニングを完了すること。スプーンやフォークを2本の指を基準にしてもち、箸への移行の準備をしていくこと。
などこの年齢ではこれくらいまで育って欲しいという姿を明確に伝えることで、保護者の方も家での関わり方が想像しやすくなります。
ただしあくまで目標であるので無理をせず、都度保育園と相談しながらすすめていきましょう。と伝え、保護者の不安を煽らないように配慮しましょう。
1年間の園行事
1年の行事や日程が決まっているのでここで改めて伝える園もあります。乳児クラスははじめての方も多いのでどんなことをするのか具体的に伝えると良いでしょう。ここでは去年度の写真等を見せながら話をするとより想像ができて良い印象になります。
保護者の自己紹介
前半は保育者が話すことがどうしても多くなってしまいますが、ここからは保護者の方に話してもらいます。緊張している保護者の方もいると思いますが、必ず全員に順番に話してもらいましょう。保護者の自己紹介の進め方については以下で詳しくポイントを解説していきます。
質疑応答
会の終盤には質疑応答を行います。
実はこの時間がとても大切でこの時間が満足のいくものになれば懇談会は大成功といえるでしょう。
ここでは園についての質問、子どもの育ちについての質問だけではなく、育児で不安なことや他の保護者と共有したいことなどがあれば自主的に話してもらいましょう。
「先ほど話していたことですが‥」
「うちの家は‥」など話がどんどん派生し、
この時間が盛り上がることで保護者にとってはとても満足のいく時間になります。
中々自主的に質問が出てこない時は保育者側から話の話題を振るなどしてこの時間を有意義に使いましょう。
ただしここで保育士が気をつけることがあります。質疑応答の中には園に対する強い要望や意見を伝えてくる方もいます。その際すぐに答えてしまうと後になってあの時良いって言いましたよね。あの時はこう言っていましたよね。というクレームに繋がりかねません。
自分だけで判断できない内容の時は必ずその場で判断して答えずに、園長先生にも伝えてからお返事させて頂きます。
と答えるようにしましょう。
まとめとお願い
質疑応答が盛り上がることもありますが時間を見ながら保育者の方から会を締めくくります。これからの1年間をクラスで楽しめるように、また園への協力もお願いしつつまとめていきましょう。
おまけのレク
時間次第ですが、会の最初や中盤、もしくは最後にレクリエーションをいれてみるといいでしょう。保育園の保護者は忙しい方が多いため園の生活を体験するということは中々ありません。歌、ダンス、読み聞かせなどをしてみることで保護者との一体感が生まれます。詳しくは以下で説明していますのでぜひ参考にしてみて下さい。
自己紹介のポイント
懇談会の最初に行う保育士の自己紹介。会のはじめとなるのでとても緊張しますよね。ここで固くなりすぎると会全体が固くなってしまうことも。和やかな雰囲気ではじめることが大切です。
保護者は何を知りたいか
まず名前をはっきり伝えましょう。「今年度〇〇組の担任になりました〇〇です。」
この後にクラスに向けてのエピソード「実はこのクラスを持ちたいなと思っていて‥」「去年度に続き持ち上がりることができて‥」「去年の先生からの引き継ぎでパワフルなクラスと聞いていて‥」等をいれながら楽しみなことをポジティブに伝えると良いです。
続いて、自分の意外な一面や趣味等を入れることで親近感が湧くこともあります。新卒の方は学生時代の頑張ったことなどを伝えるのも良いでしょう。
この先生はこんな一面があるんだ。なんだか面白そうな先生だな。これから先生と話をするのが楽しみだな。と思ってもらえるように自分のプライベートなことを少しいれることが保護者との距離を縮めるポイントになります。
ただし、休みの日は寝ていることが多く‥あまり出歩くのが好きではなく‥など、マイナスになるようなことは話さないように気をつけましょう。
長すぎず、短すぎず
自己紹介のポイントとしては、最初から長く話しすぎないように気をつけましょう。だからといって、名前と一言のみではあまりに短すぎるので事前に何を話すか書き出しておくと良いでしょう。
年齢や経験は言わない
保護者の中には保育士の年齢や経験をみて判断してくる方もいます。保護者から見れば先生たちはみんなプロであり、また保護者は担任を選べません。
聞かれていないのに自分から「まだ経験は浅いのですが‥」などと言って保護者を不安にさせるようなことはしないようにしましょう。もちろん正直に答えるのも良いですが、聞かれた際には、ご想像にお任せします!とニコニコしておくのも1つの手段です。
アピールポイントがあると尚良い
就職活動をする際に自分のアピールポイントを考えることがありますよね。保育の面では、ピアノが得意。体操をやっていました。物を作るのが好きです。など得意なことがあるとアピールしやすいですね。得意でなくても、「食べることが本当に好きなので子どもたちの食育は任せて下さい!」など自分の好きなことを保育と繋げて話をするのも良いです。
保護者の自己紹介進め方と面白いアイディア
次に保護者からの自己紹介をしてもらう際のポイントを解説していきます。私が経験してきた中での面白いアイディアもあるので参考にしてみて下さい。
内容は保育士が決める
保護者の方々も少し緊張しているかと思いますが、必ず順番に1人ずつ話してもらいましょう。私は話してもらう内容をその時のクラスによって毎回変えていますが、乳児クラスと幼児クラスではまた雰囲気も変わってきます。人数によって時間配分も難しくなってきますが以下を参考にしながら考えてみて下さい。
子ども中心の内容+で保護者の話も聞けると良い
以下は1例です。
- 子どもの名前と保護者の名前「〇〇の母(父)の〇〇です。」
- 子どもの性格
- 好きな食べ物や遊び
- 去年からの成長
- どういう子に育って欲しいか
- 家での困っていること
- 進学に向けて
- 子育ての便利グッズ
- 保護者の方の趣味
等の中から話してほしいことを何個か絞ってお願いすると良いでしょう。
人数や時間によってアレンジを加えると楽しい
小・中規模の園は時間が十分にあるというところもあります。私が経験した楽しかったアレンジ自己紹介を紹介します。
保護者自己紹介の面白いアレンジ
楽しい懇談会にしたい!保護者の方にたくさん話して欲しい!そんな時におすすめなのがくじ引き自己紹介です。やり方はとっても簡単で、事前に保育士がくじを作っておきます。順番に引いてもらい引いた内容を保護者に話してもらうだけです。
くじの内容は、
- 旦那さんとの結婚の馴れ初め
- 家での夫婦時間
- パパ・ママのストレス解消法
- 子育ての苦労
- 学生時代の思い出
等普段は決して聞けないようなことをこの機会に強制的に聞いてみます。
普段は子どもの話ばかりですが、保護者の話を聞くことで一気に距離が縮まりとても楽しめます!保護者同士でも共感し合うことがあり次の話の話題にもなるのでとてもおすすめです。ただ、どうしても恥ずかしくて話せないという方やシングルマザーの方などもいますのでテーマを変えてあげるなど少し配慮や気遣いは必要になります。
懇談会の事前準備
懇談会は当日が大変ですが、事前に準備することもたくさんあります。新年度の懇談会に向けて事前に何を準備すべきか具体的に解説していきます。
進め方や伝えることをまとめておく
懇談会に向けて、自分のノートを作ると良いでしょう。ペラペラとした紙に書いてそれをその場で読むのは良い印象ではありません。しっかりとノートにまとめておくことで見栄えも良いものになります。
当日はじっくりみて読むだけにならないように、事前に少し練習しおくと当日に慌てることなく進められます。
慣れてきたら言いたいことを箇条書きにまとめておき、詳しい文をその場で考えて伝えることができるとより気持ちが入って伝わりやすくなります。絶対に伝えることは忘れずにしっかりとメモしておきましょう。また、保護者の話や出た意見もノートにメモすると後で振り返りやすくなります。
保育室の環境整備
保育室の中まで保護者が入ることは普段はほとんどありません。新年度で環境がかわりどんな部屋で子どもが過ごしているのか気になる保護者も多くいます。
- 事前に掃除や整理整頓は必ずする。
- 個人情報になるようなものは必ず隠す。
- 不必要な私物がないか確認。できるだけ棚の中などにしまう。
- 当日使用する机、椅子の掃除と準備
以上のことはしっかり確認しておきましょう。
壁面
壁面は最近ではある園と全くない園があります。元々壁面がある園は壁面が古くなっていないか確認し、保育士の負担にならない範囲で部屋の壁面を綺麗にすることも必要になります。
写真
懇談会の最中に普段の様子や去年度の行事の例として写真を活用するのも良いでしょう。行事ごとの写真を用意するとなると少し大変になりますが、特にはじめて入園する人たちは写真があることでとても想像しやすくなります。
その他見せたいもの
園によっては1年間の行事を日付け入りで印刷し掲示しているところもあります。製作等でも何か見せたいな思うものがあれば準備しておきましょう。
懇談会のレクリエーションの詳細
上記の、懇談会の主な内容 の中で紹介したレクリエーションについて詳しく解説してきます。いくつか例を挙げていますので参考にしてみて下さい。
堅苦しい懇談会はやめたい
懇談会といえば緊張する、堅苦しい、というイメージの方が大きいですよね。保育士も保護者も話しているだけでは疲れてしまいます。懇談会は交流の場として少しリラックスできるように、会のはじめ、中盤、もしくは最後に簡単にできるレクリエーションを入れてみましょう。普段の保育を楽しむ保育士の姿を保護者に見てもらう良い機会にもなります!
レクリエーションの例
以下で取り入れてみたいレクリエーションを紹介します。
- 手遊び
- 短時間で簡単にできます。クラスの子が好きなものをやってみると保護者の方も家でやってみたりするようです。
- ダンスや体操
- 曲に合わせて真似をして踊ってもらいます。運動不足の方もいるので大きく体を動かしてもらいましょう。
- リトミック
- ピアノが得意な保育士の腕の見せ所!広い場所でできると尚良いです。
- 歌
- 朝の会や帰りの会の歌を会の最初や最後に歌ってみるのもいいでしょう。
- 絵本の読み聞かせ
- これは保育士ではなく、保護者の方にお願いしてみるのも良いです。読み方が面白いお父さんがたまにいて盛り上がります。
- 簡単なゲーム
- 保護者同士が関わりをもてるゲーム等はとても盛り上がります。
限られた時間の中で工夫しながら有意義な懇談会ができるようぜひ参考にしてみて下さい。
懇談会で抑えるべきポイントまとめ
新年度の懇談会に向けて様々なポイントを解説してきました。私も経験が浅かった頃は、懇談会嫌だな‥早く終わらないかな‥と憂鬱な日々でした。
これは保護者の方も同様で、今年の先生はどんな人なんだろう。と不安な思いで懇談会に参加しています。
目的を明確に
聞き手と話し手両方になる
時間配分をうまくする
満足のいくポイントを作る
互いが気持ちよく終わる
以上の大切なポイントを踏まえた上で今回のアイディアを参考にしながら自分なりの楽しい懇談会を考えてみて下さい。