保育園で働く保育士の皆様。
今回は、保育園で働く保育士が処遇改善手当を貰えない理由について紹介します。
※参考・引用
「技能・経験に応じた処遇改善等加算Ⅱの仕組み」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c47709ef-8880-42e6-bb7e-9818b6b728c5/b10e852c/20230929_policies_kokoseido_jigyousha_11.pdf
「令和2年度における処遇改善等加算の運用の改善」(公開終了)https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/youshiki/r02-minaoshi.pdf
「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c47709ef-8880-42e6-bb7e-9818b6b728c5/c5250be2/20230929_policies_kokoseido_jigyousha_02.pdf
保育士向けの処遇改善等加算の一覧
本題に入る前に、簡単に保育士向けの処遇改善加算について紹介します。
保育士向けの処遇改善加算は大きく分けるの以下の4つになります。
- 処遇改善等加算I
- 処遇改善等加算II
- 保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業
- その他自治体の処遇改善等加算
処遇改善等加算Iは、昔からある通常の処遇改善加算になります。
処遇改善等加算IIは、保育士等キャリアアップ研修と関係する、保育園で働く保育士の新たなキャリアを定めた、処遇改善になります。
保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業は、コロナ禍において新たに出来た、保育士等の収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための処遇改善事業になります。
4は保育園がある都道府県や自治体などによって、実施の有無が異なります。国全体の保育士向けの処遇改善とは別に、自治体内の保育園で働く保育士に向けに独自の処遇改善を行っている場合があります。例えば、東京都においては、東京都保育士等キャリアアップ補助金という制度が実施されていて、保育士の待遇は、他の都道府県より手厚くなっています。
保育園で働く保育士だけど処遇改善手当を貰っていない
- 保育士だけど処遇改善手当なんて貰っていない!
- 勤務している保育園で処遇改善なんてされていない!
保育園で働く保育士から実際にこのような声を聞く場合もあります。考えられる保育園で働く保育士が処遇改善手当を貰えない理由についてこのあと説明していきます。
保育園で働く保育士が処遇改善手当を貰えない理由
保育園で働く保育士が処遇改善手当を貰えない理由について説明します。
保育園(会社、法人)が条件を満たしていない、申し込んでいない
保育士向けの処遇改善加算は、保育所等が条件を満たした上で、市区町村等に申し込む必要があります。例えば、保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業の補助要件は以下のようになっています。
・ 補助額の全額を賃金改善に充てること
・ 賃金改善について最低でも改善額全体の3分の2以上を基本給または決まって毎月支払われる手当により行うこと
※ 令和3年人事院勧告に伴う令和4年4月からの公定価格の減額改定(▲0.9%)を反映しない賃金水準に基づいて賃金改善を行う必要があります
・ 賃金改善の計画書・実績報告書を市町村に提出すること
※引用「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c47709ef-8880-42e6-bb7e-9818b6b728c5/c5250be2/20230929_policies_kokoseido_jigyousha_02.pdf
これらの条件を保育園(会社、法人)が満たす必要があります。
保育園が処遇改善加算をすることによって、直接損をするということはありませんが、保育園がよくわからない、面倒くさいといって何もしなければ、勤務している保育園はその恩恵を受けることができません。
自分が条件を満たしていない
保育士の処遇改善加算は、
また、保育士向けの処遇改善加算の中には、保育園がある程度自由な裁量で、賃金改善を振り分けることができるものもあります。
例えば、令和4年度から開始した「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」の場合の条件が以下になります。
賃金改善の額は、全ての職員について一律同額とする必要があるのでしょうか
l 個々の職員の賃金改善について必ずしも一律同額とする必要はなく、事業者が各施設・事業所の状況を踏まえて判断することも可能です。ただし、特定の職員に合理的な理由なく偏った賃金改善が行われるといった状況とならないよう留意する必要があります。
全員を同額ではなく、役職に応じて金額を変えるというような運用もできることになっています。
実はもらっている
自分は処遇改善手当をもらえていないと思っていたら、実は貰っていたという場合もあります。
例えば、以前働いていた保育園では、処遇改善手当を基本給とは別に貰っていたという方は、次に転職した保育園では、処遇改善手当は基本給に含まれていたなんていうこともあります。別でもらえると思っていたものが、実は、すでに貰っていたなんてこともあるので、就職転職時は、特に、どの給料にどれくらいの処遇改善手当が含まれているのかを確認するようにしましょう。
まとめて支払われる場合も
保育士向けの処遇改善手当の中には、保育園がある程度自由に保育士に支払うことができるものもあります。例えば、数ヶ月に一度、給料とは別に振り込まれたり、ボーナスのような形でまとめて振り込まれるという場合もあります。
他の施設の職員の賃金改善に回されている
一部の処遇改善手当に関しては、法人が運営する他の施設の職員に分配することも可能になっています。
例えば、処遇改善等加算Ⅱに関しては、令和4年度までの時限措置ではありましたが、加算額の20%の範囲内で法人内の他の施設の職員の賃金改善に充当可となっていました。つまり、例として、法人が介護施設を運営していたという場合に、介護施設の職員の賃金改善にも分配することができるという制度になっています。
法人内の他の施設の職員の賃金改善に充当可(令和4年度までの時限措置。加算額の20%の範囲内。)。
※引用・参考「技能・経験に応じた処遇改善等加算Ⅱの仕組み」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c47709ef-8880-42e6-bb7e-9818b6b728c5/b10e852c/20230929_policies_kokoseido_jigyousha_11.pdf
保育園が中抜きしている
一部の保育園では、保育士の賃金の改善に当てるべき費用を、本来の用途とは別に利用したり、保育園の収益にしてしまっていたことが判明しています。
【参考】「待機児童解消、子どもの貧困対策等の子ども・子育て支援施策に関する会計検査の結果について」
子ども・子育て支援施策の予算の執行状況及び同施策の実施状況について処遇改善等加算の残額が生じた施設や翌年度も残額が賃金改善に充当されていない施設が一定程度あった。
※ 引用「令和2年度における処遇改善等加算の運用の改善」(公開終了)https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/youshiki/r02-minaoshi.pdf
中抜しようとして中抜している保育園もあれば、結果的に、賃金改善の実施がうまく行かずに、保育士に給与に反映できていなかったという場合もあると思います。
保育士向けの処遇改善手当について聞いてみよう
既に働いている保育園においては、処遇改善手当に疑問がある場合は、園長等にどのような内訳になっているのか確認してみると良いでしょう。
これから新たに保育園に就職や転職するという場合は、面接等の際に、それぞれの保育士向けの処遇改善加算は、実際にどのように給与に反映されるのかということを確認するようにしましょう。
また、保育士向けの処遇改善加算は、複雑なので、最終的には、総年収で就職する保育園同士を比較するというのがおすすめです。
基本的には保育士の給料は、同じ自治体内であれば似たような金額になると思いますが、よくわからない、面倒くさいと言って、保育士向けに処遇改善手当を付与していない保育園であったり、中抜しているようなブラック保育園は、必然的に、保育士の総年収が低くなります。総年収で比較すれば、基本的には、大きな間違いはないでしょう。
勤務している保育園で処遇改善手当を適切に貰えていない場合に対処法はある?
最後に、勤務している保育園で処遇改善手当を適切に貰えていない場合に対処法はあるのかという点について説明します。
基本的には、働いている保育士が対処するというのは難しいです。保育園(会社、法人)にやる気が無ければ、保育士個人ではどうしようも出来ないためです。そのため、処遇改善をきちんと貰える保育園に転職を希望したほうが良いです。
特に、勤務している保育園がよくわからない、面倒くさいといって何もしていないというような状況であれば、いち早く転職を検討したほうが良いです。保育士の待遇に関して、関心がないというような保育園は別の問題も発生する可能性が高いです。
また、近隣の保育園と比べて、保育士の待遇が悪いということは、今後も保育士の離職が増加していく可能性もあります。また、新たに就職を希望する保育士も少なくなり、他の保育園では採用されな質の低い保育士ばかりが採用されます。当然ですが、既に勤務している保育士にとっては労働環境の悪化は避けられないでしょう。
まとめ:保育園で働く保育士が処遇改善手当を貰えない理由とは?
今回は、保育園で働く保育士が処遇改善手当を貰えない理由について紹介しました。
考えられる保育園で働く保育士が処遇改善手当を貰えない理由は以下になります。
- 保育園(会社、法人)が条件を満たしていない、申し込んでいない
- 自分が条件を満たしていない
- 実はもらっている
- 他の施設の職員の賃金改善に回されている
- 保育園が中抜きしている
既に働いている保育園においては、処遇改善手当に疑問がある場合は、園長等にどのような内訳になっているのか確認してみると良いでしょう。これから新たに保育園に就職や転職するという場合は、面接等の際に、それぞれの保育士向けの処遇改善加算は、実際にどのように給与に反映されるのかということを確認するようにしましょう。