保育士の皆様。
保育士の給料待遇が低いのは誰のせいだと思いますか?結論としては、保育士の給料待遇が低いのは根本的には国のせいで間違いないです。その理由について解説します。合わせて、保育士個人が国に対して働きかけができることを考察します。
その経験が参考になればと思います
保育士の給料待遇が低いのは国のせい
私は、保育士の給料待遇が低いのは国のせいだと思っています。それについて説明します。
認可保育園の運営費は国が決めている
認可保育園の運営費は大部分は国の補助金によって運営されています。それに加えて都道府県、市区町村などの自治体などが負担しています。
子どもを預ける保護者の方も保育料を払っていますが、これはその金額のほんの一部になります。例えば、乳児だとおおよそ一人当たり20万円前後の費用がかかっています。
これらの費用は公定価格として国が定めています。公定価格は、保育園運営にはこのくらいかかるだろうと国が算定した費用になります。
ちなみに、保育園に入る補助金は保護者の方が払う保育料の分は公定価格から引かれるため、保護者の方の収入によらず、公定価格分が入るということになります。
ちなみに公定価格はこどもの年齢によって細かく定められていて「保育標準時間認定」「保育短時間認定」などによっても異なります。
これにより必然的に園児の人数で保育園が得られる費用がほぼ決まってくることになります。認可保育園はこの費用の中で運営をしていく必要があります。
保育士の配置基準も国が決めている
園児の人数に対する保育士の配置基準も国が決めています。そもそもその人数でも保育士は全然足りていないというツッコミもありますが、それは一度ここでは置いておきます。
もちろんこの基準より保育士を減らすことができないですし、安全面を考慮して保育士の人数を増やしたところで国の補助金は変わらないので、保育士一人あたりの給料が減ることになります。
必要な保育士の人数も決まっていて、必然的に保育士の給料の上限も決まってきます。保育園としても、赤字にすることはできないので、ギリギリのなかで必要な保育士を雇うしか無いです。
だからホワイト保育園であっても保育士の給料は基本的に低いです。そして、大多数はうまく経営ができないのでサービス残業や持ち帰りなどでブラックになります。
保育士の労働負担を増やすか、給料を減らすことで保育園は利益を増やすことができような仕組みになっています。
保育士の給料待遇が低いのは国のせい
再度になりますが、保育園の運営費になる国からの補助金を決めている公定価格は、「保育園運営にはこのくらいかかるだろうと国が算定した費用」です。
- 待機児童が多くて無くしたい
- 保育士不足
- 潜在保育士は多い
- なのに保育士の給料が低い
これらの条件が揃っている現状において「保育園運営にはこのくらいかかるだろうと国が算定した費用」が間違っているということです。
保育士として働きたい人が多くて「低賃金でも働きたい」人が多いのであれば国のせいとは言えませんが、保育士をしていない潜在保育士が多いのが現状になります。
今は、待機児童を無くしたくて新設の保育園を開きたいけど、働く保育士が足りないので開設できていないという状態になります。働く保育士が足りないのであれば、保育士の給料を上げればよいです。
保育士の給与を上げて保育士不足を解消すれば、待機児童もなくなります。
ただ保育園としては得られる収入をあげることができないので、保育士の給料を上げることができません。国の補助金が多ければ、需要に応じて保育士の給料はあがるはずです。
つまり、保育士の給料待遇が低いのは国のせいで間違いないということになります。
ブラック保育園はできるべくしてできている
前述の通り、保育園の運営費は決まっているため、保育園はうまく経営しないとほとんどが保育士にしわ寄せが行くことになります。
現状は国が定めた保育園の運営費だと「法律は守るけど給料は低いホワイト保育園」が限界ということです。
- 法律は守るけど給料は低いホワイト保育園
- 法律を守らない給料も低いブラック保育園
そしてブラックだからといって認可が取り消されるわけでもないので、ブラック保育園の運営は続きます。一度認可された保育園が認可を取り消されるというケースはほとんどありません。
登園している園児の問題もあるの自治体はそこまで踏み込めないという現状があります。
さらに保育士の処遇改善を行えば「法律を守らない給料も低いブラック保育園」は減って「法律も守る給料も高いホワイト保育園」が出てくると思います。
給与より保育士一人ひとりの負担を減らすべきでは?
「給与より保育士一人ひとりの負担を減らすべきでは?」という声もあります。
その通りだと思いますが、こちらも保育士の配置基準をより厳しくして、公定価格を引き上げれば解決できます。保育園は保育士をより多く雇うことになって保育士一人あたりの負担が減ることになります。
給料は上がらないかもしれませんが、保育士の負担を減らすことができます。
しかしながら、国は配置基準を緩くして規制緩和しようとしています。
政府は新たに特区に限り「地方裁量型認可化移行施設」(仮称)の設置を認める。保育士が足りなくても、職員の6割以上が有資格者であれば保育士数に応じ、国からの補助金を受けられる。
これだと既存の保育士の負担が増えることになります。
当然保育士試験を突破していない保育知識のない人の分を保育士がカバーすることになるので保育士一人あたりの負担は増えてしまいます。当然保育の質も低下します。
国は保育士の給料を上げるということではなくて、保育士でない人でも保育園で働けるようような規制緩和で保育士不足を乗り越えようとしています。
ブラック保育園に対してのペナルティもほとんどない
保育士の賃金を増やすために政府が支出した交付金のうち、7億円が賃金の上乗せに使われていないという実態が会計検査院の調査で明らかとなりました。
全国の6000カ所の保育施設を調査したところ、660の施設で7億円以上の金額が賃金の上乗せに使われていないことが判明しました。
※ 「保育士の処遇改善交付金、約7億円が賃金上乗せに使われず 不透明な経営実態明らかに」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200114-00010000-wordleaf-bus_all より
保育士に支払われるべき処遇改善費のうち7億円が賃金に上乗せされていないというニュースです。賃金に利用されていないということは保育所の利益になっているということです。
その理由が呆れたもので「失念していた」と答えた保育所もあるようです。
このような保育所に対しても認可取り消しなどのペナルティもなく、平然と運営が続いています。
6000カ所の保育施設への調査で、660の施設が処遇改善を賃金の上乗せに使われていないということなので、全体の10%以上がブラック保育園ということは間違いない事実です。
保育士個人が国に対してできること
最後に保育士個人が国に対してできることあげます。
SNS上で声を上げる
例えば有名所で言うと、「@kemeko85」さんです。
ただでさえ給料が安いのに、何で保育士は週休二日じゃないんだよ。週6なんだけど!そして持ち帰り仕事の多いこと多いこと、、、休みも仕事してるし。時給に換算したらいくらになるかな。給料明細を保育室の入り口に貼っておきたい。この給料で子ども預かってるから、めんどくさいクレーム言わないで。
— けめこは保育士を辞めたい (@kemeko85) September 12, 2019
保育に関する愚痴だけで1万フォロワーを越えています。個人でも発信することで保育の現状について疑問を持ってくれる人が増えると思います。
同じ保育士であっても「保育士の評判を落とすな」という人もいますが、私は一部であっても事実を伝えることも大切だと思っています。
保育士個人でもこれだけの影響力をもって、保育士の大変さを愚痴れる時代になっています。
保育士はやっと大変な職業だと認知されてきた
このようなインフルエンサーの方の発言などもあって、保育士の労働環境の悪さがやっと浸透してきました。
保育士と聞くと以下のようなイメージを抱く人が多いと思います。
- 手取り15万円
- サービス残業
- 持ち帰り残業
- 休日出勤多数
私も保育に関わったことのない人と話す時に何も言ってなくても「保育士は大変な職業」という前提で話が進むことが多いです。
実際は保育園で働く保育士といっても上記のような待遇のひともいれば、それなりに普通の待遇の人もいます(高待遇はいない)。
結局は働く保育園によって千差万別ですが、世間ではこのようなイメージがついていると思います。
「保育士 = 大変」というイメージは保育士不足を加速させる
保育士が大変な職業と認知されると、今後の保育士の担い手が減ることになります。
誰もわざわざ大変な職業に進んで就こうとは思はないですよね。中学生や高校生などの敢えて保育士になりたいという人は減っていくと思います。もちろん潜在保育士の方も、本当は保育士に戻りたくてもやめようという風に思うと思います。
今後の保育士の担い手が少なくなると何が起きるかと言うと、保育士不足が加速することになります。
そもそも今の保育士不足は、保育士資格を持つ人が保育士という職業になんらかの形で見切りをつけて別の職業に就いているために起きています。
保育士として働いていない潜在保育士は80万人程度もいますが、実際に保育士として働いている人は40万人程度と言われています。
保育士の担い手が少なくなる方が既存の保育士は得をする
保育士の担い手が少なくなる方が既存の保育士は「基本的には」得をします。
保育士不足が加速すると待機児童が増えるので、国は保育士を確保するために保育士の待遇を上げなくてはいけなくなります。
そのため、保育士の担い手が少なくなる方が既存の保育士は得をすることになります。
保育士が余っている状態で主に得をするのは「国」「保育園の経営者」です。今よりも簡単に保育士を低待遇で雇うことができるからです。
逆に言えば、保育士の待遇改善は基本的に国の補助金によって決まるため、国が動かない限り待遇改善は起き得ないです。
そして、国が一番動くのが、保育士不足による待機児童の増加になります。
選挙の投票で意志を示す
もうひとつの方法は選挙の投票で意志を示すということです。
前回の参議院選挙では保育士経験のある方も出馬していました。
残念ながら落選となっていましたが、保育士にとって良い政策を掲げている党や個人に対して投票をしてみるのも良いと思います。
現役の保育士は40万人以上いると言われているので、一致団結できればひとりぐらいは当選させられると思うのですがなかなか難しいですね。
保育士を辞める
もっとも効果があることが、悲しいことではありますが「保育士を辞める」ということです。
保育士を辞めることで実質的に待機児童が増えることになるのでもっとも効果がある方法です。潜在保育士は80万人に言われています。もちろん一人辞めたぐらいでは変わらないかもしれませんが、それらが積み重なって今の保育士不足になっていると思います。
保育士を辞めれる環境にある人は一度保育士を辞めて、待遇が改善したら戻ってくるというのが良いと思います。
【まとめ】保育士の給料待遇が低いのは国のせい
結論としては、保育士の給料待遇が低いのは根本的には国のせいで間違いないです。
個々の保育園での業務効率化程度で改善できるような問題ではありません。根本的に補助金の金額が足りてないです。
- 保育士の給料は上げられない
- 国の保育園への補助金額はほぼ固定で決まっているから
という状態になっています。最近でこそ処遇改善が進んでいますが、まだまだ足りていないので、保育士にとってもっと働きやすい日本になると良いなと思っています。