国の地方裁量型認可化移行施設の制度から保育士の未来を考察。

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こんにちは。さえこ@ブラック脱出済み(プロフィール)です。ブラック幼稚園・保育園を脱出できました(^^)

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保育士の皆さん。地方裁量型認可化移行施設という制度をご存知ですか?

地方裁量型認可化移行施設とは簡単に言うと、保育士が6割で良い保育園で、認可保育園なみの補助金が貰える保育園です。平成31年4月1日から国家戦略特別区域で始まった国主導の制度ですが、保育士資格を軽視するこのような制度から今後の保育士の未来を考えてみました。

この記事の信頼性
私は保育園、幼稚園、認定こども園で勤務した経験があります
地方裁量型認可化移行施設に関しては、国や自治体の公式HPの情報を参考にしています
その経験が参考になればと思います
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地方裁量型認可化移行施設とは?

地方裁量型認可化移行施設は、平成31年4月1日から始まった国家戦略特別区域における国主導の保育施設に関する制度です。

もとは保育士不足に悩む大阪府・大阪市の提案で、認可保育園において、所定の研修を修了した「保育支援員」を保育士に置き換えて配置できるようにしたいという提案がありました。

それに対して答える形で、厚生労働省は国家戦略特別区において、配置基準の6割が保育士であれば、地方裁量型認可化移行施設という新たな保育施設の制度を作りました。

「地方裁量型認可化移行施設」に対しては、認可保育園と同等の運営費が支給されます。

待機児童がいる期間の時限的な制度で、将来的には認可保育園への移行を目的とするため、認可化移行の計画期間は5年間とされています。しかしながら、自治体の判断で延長も可能となっています。

項目 認可保育園 地方裁量型認可化移行施設
種別 認可保育園 認可外保育施設
保育士の割合 100% 60%
補助金 認可保育園の基準額 認可保育園と同等の額
認可移行期間 5年間とし、自治体の判断で延長も可能
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待遇改善で保育士を増やすのではなく、無資格者で穴埋めする流れが加速

認可保育園では、国が定めている保育士の配置基準に従って保育士を配置する必要があります。

職場に無資格の保育補助の方がいる場合もあると思いますが、それはあくまでも保育士の配置基準を満たした上での追加のサポートを行う場合です。保育士としてカウントすることはできません。

地方裁量型認可化移行施設は、国が定めている保育士の配置基準に対して6割は保育士、残りは無資格者でも良いことになります。

潜在保育士は80万人もいると言われていますが、それらの方々を保育士として引き戻すために保育士の待遇を改善するというよりも、規制緩和して保育施設で働くことができる人を増やそうとしています。

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保育の質は確実に下がる

地方裁量型認可化移行施設には保育士の質を確保するために以下のことが義務付けられています。

⑤保育の質の確保のため、下記措置等の実施を義務付け。
・地方裁量型認可化移行施設への定期的な指導・監査の実施や運営状況の見える化
・都道府県の協議会による人材確保策の実施・公表

これが効果のあるものなのかはわかりませんが、保育士の配置基準の中で、資格を取得できる知識や能力が無い人が保育を担うことになるので、質は確実に下がると思います。もしこれで、保育の質が下がらないのであれば、保育士の資格というものの存在はほぼ無意味なものになりますよね。

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保育士の負担も増える

ただでさえ厳しいと言われている保育士の配置基準の中で、資格を取得できる知識や能力が無い人が同じ場で働くことになるので、既存の保育士の負担はさらに増えることになります。

無資格であっても保育スキルが高い人はいる!という反論もあるかもしれませんが、それであれば保育士資格を取得すればよいだけの話です。

既存の保育士の給料は上がらずに負担増になるのでますます、保育士の保育士離れが進んでいくことが考えられます。

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規制緩和は徐々に行われていく

自分が働いている圓は地方裁量型認可化移行施設ではないので関係ない!と感じている方もいると思います。

たしかにその通りですが、注意が必要なのは規制緩和は知らない間に徐々に行われているという点です。

最近でも以下のような保育士配置の規制緩和となるような制度ができています。

  • 企業主導型保育事業
    • 保育士の割合50%、認可保育園なみの保育園補助金
  • 朝夕など児童が少数となる時間帯における保育士配置に係る特例
    • 保育士最低2人配置要件について、朝夕など児童が少数となる時間帯においては、保育士2名のうち1名は子育て支援員研修を修了した者等に代替可能とする。
  • 幼稚園・小学校教諭の保育士代替
    • 保育士と近接する職種である幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭を、保育士に代えて活用可能とする。

私自身も知らないまま、地方裁量型認可化移行施設が出来ていましたし、今後もこのような気づかない間に徐々に規制緩和が行われていく可能性があります。

気づいたら自分が働いている保育園になんらかの影響が出ているということが起きます。

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保育士の資格は将来無意味なものになる?

個人的な見解としては、保育士の資格が全く無意味になるということはないと思います。

ただし、規制緩和が続いて形骸化していくということは十分考えられます。少なくとも、保育士余りの時代になるまでは、国はできる限り保育士ではない人を保育園で働かせて乗り切ろうという意思を持っているように感じられます。

国としては、とりあえず待機児童を減らしたいけどなるべくお金はかけたくないので、無資格の保育人材を活用しつつ乗り切ろうという形です。今後、保育需要が落ち着いてきて待機児童がいなくなったら、今度は保育士が余り出すと思います。

保育士の待遇を上げずに乗り切ったので、待遇は低いままで保育士の雇用が失われるという未来が起きるかもしれません。

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経営者は当然、簡単で安い人材を雇用する

保育園の経営者は、人件費を削減できるので当然、簡単で人件費のかからない安い人材を雇用することになります。まぁ、この点に関しては保育園に限らず、会社全般に言えることだと思います。

しかも、国が言うには、保育の質は「地方裁量型認可化移行施設への定期的な指導・監査の実施や運営状況の見える化」「都道府県の協議会による人材確保策の実施・公表」で確保されるらしいので、質の面でもお墨付きです。

仮に、無資格者を雇っても室は担保されるのであれば、賃金も安く雇いやすい無資格者を登用することになります。

特に待機児童が発生していて黙っていても定員が埋まるような状況であれば、がんばって保育園の評判やサービスを向上させる必要もないかもしれあません。

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保育士個人はどうしたら良いか

保育士個人は今後どうしていけばよいかという点を紹介します。

保育士・他業種問わずに転職する・転職できるスキルを身につける

対策としてできることは保育士や他業種に問わず転職できるスキルを身につけることです。今でこそ保育士不足ですが、将来的には保育士が充足する可能性もあります。つまり余ってしまうということです。

保育士が不足した未来では、今のように気に入らないことがあれば違う保育園に転職すれば良いというような考えは通じなくなってきます。保育園も募集をすればすぐに保育士が集まるような状況だと、待遇を改善しようとか働き方を良くしようとは思わないかもしれません。

辞めたいけど新しい保育園に採用してもらえない、他業種に転職するにもなんのスキルももっていない、というような状態だと今よりもさらにブラック保育園に搾取される形となってしまいます。

保育士としてのスキルはもちろん、他業種に転職できるようなスキルを持っていたほうが安全と言えると思います。

保育の質が低い保育園とは関わらない

施設の種類を問わず保育の質が低い保育園とは関わらないほうが無難です。質の低いスキルが身につきますし、保育士はなにかトラブルが起きた場合の責任も重いです。

例えば、福岡県の認可保育園で子どもに対して複数の保育士が暴言を浴びせたというニュースが話題になっていました。

この保育園では、特定の誰かというわけではなく、実に8人の保育士が暴言を浴びせていたようです。このように、特に若手の保育士であれば、その保育園で長く勤めることで、このような正しくない行為が当たり前になってしまい、適切ではない保育スキルが身についてしまうことがあります。周りがやっているからと言う理由で自分も同調してしまうことはないとは言えないと思います。

保育園の保育の質が低いなと思ったら、別の保育園に転職するなどして、なるべく関わらないようにするのが良いです。

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まとめ:国の地方裁量型認可化移行施設の制度から保育士の未来を考察。

国の地方裁量型認可化移行施設の制度について説明しました。

簡単に言うと、これから認可保育園に移行する予定の施設のことで、保育士資格がない人でも保育者として就業させることができる施設です。補助金についても認可保育園並のものが支給されます。

国は待機児童が増えて、保育士が足りないとなれば、保育士の待遇を改善して保育士を確保すると思っていました。もちろん、処遇改善などは最近でこそ進んできましたが、それでも保育の担い手は足りていない状況です。

そんななかで出てきた地方裁量型認可化移行施設などの国が考える制度を見ると、どうやら保育士の待遇を改善すると言うより、場当たり的に保育人材を担える母数を増やして、待遇はそのままで乗り切ろうという感がのようです。

もちろん、保育士個人が声を上げて国を動かすという行動もすべきですが、個人の行動では限界があると思います。例えば、2019年10月の消費増税についても多くの国民が反対の声を上げていますが、結局増税が決定されました。

保育士個人としては国に対して意見や不満をぶつけつつも、悲観的な保育士の未来も見据えて自分ができる行動をしていくべきだと思います。