保育士不足と言われて久しいですが、なぜ保育士不足が起きているのかということを考えたことはありますか。
- 保育士不足って何で起きている?
- 保育士不足だと保育士にとっては何が問題なの?
今回は、保育士不足はなぜ起きているのか、そして、なぜ保育士が保育士を辞めてしまっているのか、保育士不足で保育現場に起こっていることなどについて解説します。
一方で、保育士不足は働く保育士にとっては、チャンスという側面もあります。転職などで待遇や環境を変えることが容易にできるためです。これについても説明します。
その経験が参考になればと思います
保育士不足とは?
保育士不足とは「保育園で働く保育士が不足している」ということです。保育園には預かる園児の定員が決まっていて、その園児の定員構成に対して、概ね何人の保育士が必要なのかということが決まっています。その人数に対して就業を希望する保育士の人数が足りていないという状況になります。加えて、いまの日本には新しく保育園を開くという場合もあるので、あらたに多くの人数の保育士を雇用する必要があります。
保育士不足はなぜ起きている?
前項で保育士不足の概要に関して説明しましたが、次は保育士不足が何故起きているのかという点を解説します。
保育需要が伸びている
保育士不足が起きている理由の一つが保育需要が伸びているという点が上げられると思います。保育需要が伸びているということは、保育園を利用したいという保護者、及び、その子どもが増えているということです。日本で待機児童が発生しているのは保育園とその定員が不足しているためです。保育園に入園を希望する子どもが増えると、より多くの保育園が必要になります。保育園を新しく開くにはそこで働く保育士がさらに必要になります。結果的に、このことが保育士不足を招いていると言えます。
なぜ保育需要は伸びている
そもそも、なぜ保育需要が伸びているのでしょうか。日本では少子高齢化が進んでいて、子どもの人数が増えているというわけでありません。少子化でも、保育需要が伸びているのは、子育て世代の働き方の変化が上げられます。
日本では、一昔前は、夫が働き妻が家で子どもの面倒を見るというスタイルが一般的でした。その際、子どもは幼稚園などに通うケースが多かったと思います。昨今では、子育て世代の働き方が代わり、共働きの世帯が増えています。
そのため、より長時間預かる保育園に入園を希望する保護者が増えているという背景があります。一方で幼稚園の需要は減少傾向にあり、預かり保育の拡大や認定こどもへの移行をする幼稚園が増えています。
保育士が保育士を辞めている
保育士不足が起きているもう一つの理由が、保育士が保育士として働くことを辞めてしまっているということが上げられます。日本には保育士資格をもっているが保育士として働いていない「潜在保育士」が約80万人程度いると言われています。保育士が保育士として働くことを辞めてしまっていることで、結果的に保育園で働く保育士が不足してしまっているという背景があります。
なぜ保育士が保育士を辞めている?
そもそもなぜ保育士が保育士として働くことを辞めてしまうということが起きるのでしょうか。
給与が悪いから
保育士が保育士として働くことを辞めてしまった理由でも多いと言われているのが給与に関してです。何年働いても手取り15万という人もいるほど、保育士が低待遇であるということは最近では有名ではないでしょうか。
昨今でこそ、処遇改善などが多少進んでいて徐々に待遇は改善されてきてはいますが、一度保育士を辞めた人がふたたび戻るという程ではないのかもしれません。保育士として働くよりも、他の職業で働いたほうが良い給料をもらえるという状況であれば、保育士を辞めると考える人が出るのは当然です。
仕事内容や負担が多いから
次に、保育士が保育士として働くことを辞める理由で多いのが、保育園で働く、仕事内容や負担が多さがあげられると思います。結局のとこは、多少仕事内容が大変、負担が多いと言っても給与がある程度保証されていれば納得はいくという側面もあると思いますが、仕事が大変で負担が多い割に給与も低いということで、保育士を辞める人が出てきてしまっていたと考えられます。
保育園はなぜ保育士の給与や待遇を上げないの?
保育士が給与面が原因で保育士を辞めてしまっているのであれば、保育園が保育士に支払う給与等を上げればよいのではということは容易に思いつくと思います。そうすれば、給料面が原因で保育士を辞める人を繋ぎ止めることができるはずです。
でもそうなっていないのは、それが難しいからです。
その理由が、保育士に支給する給与などを含めた保育園の運営費は国が決めているためです。これは「公定価格」という風に言われています。実際の算出方法は難しいですが、大まかに説明すると、保育園で預かる子ども一人当たりに対して、人件費、事業費、管理費などがどの程度必要なのかというものを定めています。保育園は運営費としてその金額を受け取ります。
その中の金額から保育士の給与が支払われるので、無制限に保育士の給与を上げることが出来ない状態になっています。仮に上げたとすると保育園が赤字になってしまい、存続ができなくなってしまいます。
では、保育園が頑張って預かる子ども増やせばいいのではないか、と思うかもしれませんが、それも難しいです。保育園が預かることができる子どもの人数は、施設の床面積などの制約が厳しく定めらているので、勝手に預かる人数を増やすことはできません。
また別の観点では、保育士が能力を上げて、一度にたくさんの子どもたちを見れるようにすれば良いのではないか、と思うかもしれませんが、それも不可能です。保育園の園児の年齢とに人数に対して、配備すべき必要な保育士の人数も厳格に定められているので、ベテランでスキルが高い保育士を育成すれば、保育士を減らして良いというわけではないです。
このように、保育園が保育士が不足しているからといって保育士の給与を釣り上げていくというのはかなり難しくなっています。
仕事面の負担に関しても同様で、保育士ひとりひとりの負担を減らすことができる一番の方法は新たに保育士を雇うということです。ですが、それも結局の所、金銭的な理由で難しくなっています。保育士をたくさん雇えばその分、補助金をもらえるということでは必ずしもないので、結局は、同様にお金の問題で保育士の仕事内容の負担を減らすこともか難しくなっています。
保育士不足で保育現場に起こっていること
次に保育士不足が起きていることで実際の保育園の現場で起きていることを解説します。
保育士が足りていないまま保育が行われている
保育士が足りていないまま保育が行われているということが起きています。例えば、急な退職者が出た場合は、新たな保育士を雇い入れる必要がありますが、保育士不足がそれができないという場合です。
結果的に現状の人数で保育園の運営をすすめる必要が出てきます。保育士の配置基準は国よって定められていますが、その基準でも働いている保育士から見た場合に十分とは言えない人数と感じる場合もあります。基準ギリギリの人数でクラスを運営しなければいけなかったり、あるいは、よくないことではありますが、時間帯によっては基準を下回ってしまう瞬間というも起こり得ます。
保育士ひとりひとりの負担が増加
保育園内で保育士が不足していると、保育士一人ひとりの負担も増加します。例えば、行事の担当の人数が少なくなり一人の仕事量が増加するなどです。書類なども担当範囲も増える場合もあります。
勤務する保育士が足りないことによって、働いている保育士の休暇が取りにくくなっている、残業が増加している、持ち帰りの仕事が増加しているということもあると思います。
これは保育士不足だけが原因ではなく、書類や保護者対応など保育士が求められる仕事量が年々増えているということもあるようです。
新たな保育士の雇用が難しい
保育士不足で、保育園が新たな保育士を雇用することが難しくなっています。保育士が採用できずに、保育園が受け入れられるはず定員を減らさざるを得ないという状況も出てきています。
新たな保育園の開設が難しい
新たな保育士の雇用が難しいということは、保育園にとっては新たな保育園の開設も難しいということです。保育園を開く資金、土地、建物、ノウハウなどがあっても保育士が雇用できないと保育園を開くことが出来ません。
結果的に、保育士不足が原因で新たな保育園を開設できない事業者も出てきています。
保育士不足は保育士にとってはチャンス
保育士不足は保育士として働くことを希望する人にとっては、チャンスでもあります。保育士不足を保育士がチャンスとして行動する方法を紹介します。
- 保育士の求人が増えている → 保育士は働く保育園を前より選ぶことができる
- 保育士の採用が難しい → 雇用している保育士の環境を改善しようという動きが増える
たしかに、現場では人手が足りないまま保育が行われてしまって、保育士一人あたりの負担が増加してしまっているという側面もあります。
その反面、働く保育園を変えて選びということがしやすくなったり、保育園自体も待遇を改善しようという動きが増えています。
積極的に転職する
現在の環境に少なからず不満がある場合は、積極的に別の保育園に転職をするということを検討すべきです。保育士不足の時代だからこそ、求人数も多く、面接の合格率なども高くなっています。保育士本人の待遇が劇的に変わるのは、やはり働く保育園を変えた場合です。もちろん、内部から保育士の待遇などを変えていくことは不可能ではないですが、はっきりいって効率が悪いです。ブラック保育園は、いつまでもブラックなので、内部から変えるということに労力を使うよりは、働きやすい保育園に転職したほうが効率的です。積極的に転職をすることで、現状よりも良い環境で働くことができる可能性を上げていくことが出来ます。
就職・転職時に妥協しない
保育士が就職・転職する際は、決して妥協をしないということも大切です。しっかりと保育士ひとりひとりが働く保育園を吟味し選ぶということです。保育士の求人も多いので、その分、就職転職を考える保育士にとっては、選択肢が多く大変だと思います。面接や見学にも労力がかかるので、ついつい妥協してしまいがちだと思います。
特に就職転職時は、ブラック保育園に対しては、保育士が妥協をしないことで簡単に保育士は採用できないということを示す機会でもあります。そうすることで、今はブラックな保育園であっても、保育士の働き方や待遇改善をしなければいけないという意識が出てくるかもしれません。保育園全体として保育士の働き方や待遇を改善するということにも繋がります。
まとめ:保育士不足はなぜ起きている?保育士はチャンスなので積極的に転職しよう!
今回は、保育士不足がなぜ起きているのかということも説明しました。
保育士不足は保育士にとっては負担が増してしまうという側面もありますが、一方でチャンスでもあります。もし保育士が不足していなかったら、現状の保育士の待遇や就業環境を改善しようとは誰も思わないでしょう。逆に言うと、いまは日本全体として保育士の就業環境や待遇を改善することができるチャンスでもあります。
保育士不足の理由をしっかりと理解することは保育士にとっても大切です。最終的には保育業界全体が保育士にとって働きやすい環境になって保育士不足が解消されれば一番良いですね。